2010年5月6日木曜日

S.Irmer / Rossini Piano Works

以前から度々書いているように、自分はクラシック音楽の中で歌物だけは苦手。と、言うことは当然歌がたいてい出てくる宗教曲とか歌劇はぜんぜんダメということです。これだけで、クラシック音楽の1/3くらいは捨てているようなもの。

歌劇というのは、CDで音だけを聴いていても、舞台とか台詞がイメージできないのでまったく面白くない。好きな人は、せっせと直接舞台を見に行っているんでしょうけど、そんな時間もありません。そもそも、たいていの歌劇はイタリア語かドイツ語ですから、直接観たとしても何を言っているかもわからんちんなのです。

初期のオペラの代表的な作家といえばモーツァルトでしょう。モーツァルトのスタイルは、台詞の間に曲や歌が入っているというもの。それをワグナーが演奏にも重要な性格を設定して、音楽と劇とを融合させたということらしいのです。

イタリアで最も有名なオペラ作家と言えばロッシーニ。「セビリアの理髪師」とか「ウィリアム・テル」なんてのはタイトルを知らない人はまずいないくらい有名。当時は絶大な人気を誇っていたらしいのですが、その人気絶頂の時に「ウィリアム・テル」を最後にオペラ界から引退してしまいます。

どうも、美食家としても有名なロッシーニですから、パリで高級クラブを開いてグルメ三昧をしたかったらしい。今でも、フランス料理には「なんたらかんたらロッシーニ風」というような料理がいくつも残っています。

それでも、まったく音楽から身を引いたわけではなく、クラブで毎晩みんなで楽しむための小品をこつこと書きためていました。それが「老いのいたずら」と題された作品集で、200曲あまりの曲が含まれており、歌物、室内楽、ピアノ曲などがふんだんに混ざっています。

その中から、ピアノ独奏曲を録音したのがこのアルバムということになります。膨大な曲数があるので、このセットもCDは8枚にわたっています。イルマーというピアニストについては、もちろんよく知りません。他にも数種類のセットが発売されているのですが、値段と内容の豊富さから選んでみました。

これがなかなか良いのです。もともと、自分が楽しむために書いたものでしょうから、肩に力が入っていない。それを物足りないと思う方もいるかもしれませんが、とにかく聴いていて楽しいということは音楽であるからには必須の条件でしょう。

中には、オードブルをテーマにした曲や、中国に関連した曲などがあって、大変ユニークです。録音も申し分なく、歌物が苦手な自分にはロッシーニがオペラから引退したことがラッキーだと思えるのでした。