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2011年9月17日土曜日

激変した関節リウマチ診療

このブログでも、今までに随分と関節リウマチに関連した話を書いていますが、特に「この10年くらいの間に関節リウマチの診断・治療は激変した」という表現は何度も使っています。

じゃあ、実際何が変わったのかというのも、その時々に書いてはいますが、少しまとめてみましょう。

1980年代までは、原因不明の関節の痛みと腫れが多発すると関節リウマチという診断となり、シオゾールという注射薬を主として使用して、結局関節の変形が生じて手術をするというのが一般的なパターンでした。

1987年にアメリカ・リウマチ学会が診断のための分類基準を発表し、関節リウマチという病気に一定の定義を与えることになりました。

この頃は、「治療のピラミッド」と呼ばれた方式により、副作用の少ない一般的な痛み止めを使うことから治療が始まりました。痛み止めでは生活の支障がある場合に、副作用の危険がある免疫を調勢するリウマチ治療薬を使用し、それでもだめならステロイド剤を併用していくという''STEP-UP''という考え方だったのです。

しかし、実際に分類基準を用いて診断できるのはけっこう時間がたってからで、ある程度の関節の破壊はやむを得ないという状況だったのです。関節炎の指標となるCRPという検査値も2~3くらいであれば、コントロールとしては悪くないと考えられていました。

そして1999年に日本でもメソトレキセートという、強力に免疫力を押さえ込むことができる薬がリウマチ薬として登場したことで、CRPは2以下にまで下げることが目標となり、またやわな薬からちまちまと使っていてはだめだと考えられるようになりました。

最初からメソトレキセートをしっかり使っていく、ステロイドも効果的に痛みを抑えるため、状況によってははじめからでも使用していく。この方式は、それまでと比べて劇的に効果を上げることになりますが、依然として早期の診断の難しさはかわりありませんでした。

2003年に最初の生物学的製剤が登場し、ついにCRPを1以下、あわよくば0を目標にするということが可能になったことは、まさに「激変」の象徴ということができます。そして、それまで少なかった診断のための検査も徐々にふえはじめました。

基本的に不治の病と言っていた関節リウマチも、ほぼ「治癒」した状態になる患者さんが出るようになり、より診断的精度を高める必要が出てきたのです。もはや分類基準も20年たち、早期発見・早期治療という時代のニーズに対応できなくなりました。

2009年についに分類基準が改定され、早期に診断をつけて治療を開始する根拠とすることが可能になりました。それを受けて、「リウマチは半年で治す」という、ちょっと前までは夢のような戯言だったことが、現実の目標として掲げられるようになってきたのです。

患者さんが自覚症状を感じてから、すぐに病院を受診しても状況によっては診断を確定し、生物学的製剤を中心に治療を開始する。数ヶ月後にはほぼ沈静化して、ほぼ治った状態になることが期待できるようになりました。

文章に書くとそれほどとは感じないかもしれませんが、1999年のメソトレキセートの登場以後は1~2年ごとに診断・治療の方法が変化しているわけで、これは臨床の現場にとっては尋常なことではありません。

自分も、ちょうどこの時期に女子医のリウマチセンターにいなかったら、とてもついていけなかったと思います。まさにタイムリーな時期に勉強させてもらったというべきでしょう。整形外科でも内科でもなく、完全にリウマチ医という専門ジャンルが確立したと言っても過言ではないのです。

自分たちのようなリウマチ医は、その激変した医療技術を患者さんに的確にフィードバックするために、まったく気が抜けないのですが、それでもまだまだ回答の不十分なことはいくらでもあるのです。

まだまだ、次の10年間にも多くの進歩があることと想像します。当分、勉強の手をゆるめることはできそうにありません。