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2012年12月22日土曜日

ALWAYS 三丁目の夕日 (2005-2012)


2005年の第一作、翌2006年の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」、そして今年2012年の「ALWAYS 三丁目の夕日'64」と山崎貴監督が、昭和30年代の時代を完璧に映画の中に再現した三部作です。

敗戦後、少しずつ再生しだした日本は昭和30年代に高度経済成長期に突入します。携帯電話もインターネットも無いにもかかわらず、日本が最も元気で活気付いていた頃です。

第一作は昭和33年、東京タワーが完成する直前の東京、港区を舞台にしています。上野駅、集団就職という、まさに時代を反映する出来事から始まります。

上京してきたのは堀北真希で、まさに田舎の女学生然。迎えにきたのは就職先の鈴木オートの社長である堤真一。乗っている車はオート三輪。奥さんは薬師丸ひろ子で、使っている冷蔵庫は氷で冷やすタイプ。

向かいの駄菓子屋の主は、しがない小説家の吉岡秀隆。彼が通う小料理屋の女将が小雪で、彼女からこどもをおしつけられてしまう。この二組の世帯を中心に、町の何気ない日常の話が進行していきます。

映画では、ストーリーが基本。役者がいて、いろいろな役柄を演じて、自分たちに様々な疑似体験を通じて楽しくさせたり、悲しくさせたり、あるいは怒らせたり、そして喜ばせる。

その背景となる舞台は世界を作る裏方で、けっして表にでしゃばるものではなく、意識しないところで体験に現実味を加える道具の一つ。

でも、この映画ではむしろ背景が主役といっても過言ではありません。まず見事なまでに再現された昭和30年代の東京の景色が、すぐに気持ちを一気にこどもの頃へ戻してくれるのです。本当は、気がつかれてはいけないもので、本来は映画では引き立て役。

ミニチュアとCGとオープンセットだとわかっていますが、あまりの出来栄えに「絵空事」的な感情をさしはさむ余地を与えません。

心の中に残っていたおぼろげな記憶が呼び戻されるのですが、すでに美化されたいい思い出だけが映画の中の「現実」として蘇るのです。それは、昭和30年代という時代の箱の中で繰り広げられるドラマについても同じ。

ここに登場する人は、悪人はいない。近所同士でのおせっかいなくらいの付き合いもあり、出てくる人々は他人のためにせっせと汗を流すのです。そんな嘘っぽさが、自然に見えてくるのもよくできた舞台のおかげ。

ダンプカーの土埃や、排気ガスによる公害などはここにはでてきません。こそ泥とかもいないし、チンピラとかも出てこない。それぞれの昭和を知る人の記憶の中のいいところだけを、救い出してくれているのです。

それを偽物と考えればそれまでのことですが、素直に自己満足の世界にひたればいい。まさに本当の「仮想現実」の空間を楽しむことができる、これはまさに映画でしかできないことなんでしょう。

現代の仮想現実、バーチャルリアリティにはその土台となる知識・経験・記憶といったものが欠けています。想像の世界を、本物のように見せるだけのこと。

なんにしても、まさにこの映画の時代に、まさにその土地の付近で育った自分としては、無条件に受け入れてしまうわけです。