小さな勉強会が、地域の関節リウマチ診療に少しでも役に立てばと発展して、昨日は第14回目でした。ここまで続くと、学会とは言わないものの、それなりに意義のある会としての存在価値もでてきたのかもしれません。
昨夜の講演は、昨年秋に慶應大学の准教授に就任されて山岡先生による「JAK阻害薬の行方」というもの。
山岡先生は、リウマチ研究の次世代を担う旗での一人。内服のタイプとしては初めて登場した生物学的製剤である、トファチシニブ(製品名ゼルヤンツ)に関する研究では日本の第一人者です。
トファチシニブは、2年前に登場し、それまで細胞の外で作用していた生物学的製剤と違い細胞内での薬理作用を持つ事から、当初副作用が懸念され慎重論が多く出されていました。
しかし、臨床データが蓄積されてきて、他の生物学的製剤の同等か、時にはそれ以上の効果があり、副作用については大きな違いがないことがわかってきています。
細胞外作用の生物学的製剤が注射タイプばかりなのに対して、内服薬であることのアドバンテージはかなりあるわけで、今後日本でも使用される機会はどんどん増えて行くことが想像されます。
関節リウマチでは、自分の体に対して免疫反応を起こしています。そのターゲットは関節の中の滑膜と言う組織で、その結果滑膜炎が生じ骨破壊へとつながります。
関節内に炎症性のサイトカインと呼ばれる様々な物質が増えています。サイトカインは、細胞外で何らかの情報を伝達する働きをしていますが、従来の生物学的製剤は、直接サイトカインを無効化する抗体という攻撃物質か、サイトカインが細胞に付着する場所を横取りするよな拮抗物質でした。
トファチシニブは、サイトカインが細胞に取り付いた後に、サイトカインの情報を伝達するJAKと呼ばれる酵素を阻害する働きがあり、その結果異常な免疫反応を抑制する力を発揮します。
山岡先生の話では、いろいろな研究データに基づく薬の体の中での働き方、そして臨床における実際の効果についての説明をコンパクトに聞くことができました。
話術も大変お上手で、今後もリウマチ研究の成果をわかりやすく広めていただけることが期待されます。まだまだ謎の多い関節リウマチという病気ですが、山岡先生のように優れた研究者が、どんどん出てくることは心強いことです。