政府は、現在の135万床ある病院の入院ベッド数を、2025年までに15~20万床減らす方針を明らかにしました。
入院ベッドが多いと、入院しなくてもいい人が入院し医療費を増やすことにつながるためだそうです。そういう人は自宅や介護施設で療養してもらい、介護保険の枠で治療しろということ。
これは、新しい話ではなく、すでに1999年の介護保険の導入後、少しずつ実際に行われていることで、目新しいことではありません。
ただし、現実的には問題の解決、つまり医療費の抑制にどれだけ貢献しているのかは、現場に近い自分としては、ずっと疑問を感じるものではありますが・・・
というのも、そもそも医療費の見かけ上の削減のために医療の中から介護部分を切り離したのが介護保険。医療にしても介護にしても、高齢化社会においては、それにかかる費用は減るどころかどんどん増えて当たり前。
それを無理に削減することしか考えないのは、結局は福祉サービスの縮少にしかなりません。年金問題も同じで、どんどん支給額は減少するのでしょうから、根本的に破綻しているシステムと言わざるをえない。
本来、介護は医療ではないという建前が二つの保険の大前提としてあるので、介護保険の中では医療サービスの提供は基本的にはできません。つまり入院している人を自宅や介護施設にまわしても、治療については多くの制約が出てくるのです。
現実に、介護保険も必要な予算がどんどん膨大化しているわけで、その対象者を厳しく制限するようになってきていますし、事業者側も介護報酬が潤沢とはいえない状況があります。
具体的には、見取りができる施設を増やさないとベッド削減は難しい。見取りができるということは、医療サービスも併設して可能にするわけで、根本的な矛盾が生じるわけですし、実際そういうことができる施設基準は高すぎて、なかなか増えていかない。
減らすことばかりを考えるのは、全体の萎縮につながるわけで、増えるものに対しては増やしていく予算配分を考えることが必要なのではないでしょうか。また、自宅で見とれる環境を作る、そういう意識を持てるような社会を構築する方向を考えないといけないのかもしれません。