元京都大学医学部の准教授が、医療機器メーカーに賄賂を要求して逮捕されました。この手の話は、よくあると言ってしまえばそれまでで、医療業界は腐っていると批判される元にしかなりません。
ただ、昔から商売という観点から考えると、ある程度の商談成立のためには気を引くためのやり取りというものが介在することは不自然な事ではありません。
しかし、現代はそういうものに対しての批判がたくさん出てくるような時代で、医療業界に限らず、とにかくフェアが求められることを無視はできません。
ただ、その当たりのライン引きがなかなか難しい。自分たちのような一般の開業医に対しては、この数年で何らかの製薬会社、機器会社からの「利益供与」と呼ばれるものは、ほぼ皆無になりました。
以前は、年末なると売れるくらいカレンダーが集まりました。年が明けると、使い切れないくらいの年賀タオル。その後、営業が訪問するたびにボールペンや付箋紙をくれる。
各メーカーが年に数回は、宣伝用のアメニティ・グッズを作って持ってきます。使えるもの使えないものいろいろですが、中には普通に買うと数千円規模のものもあったりしました。
また、食事会に呼んでくれることも珍しくは無く、おかげで自分ではまず行かないような店に連れて行ってもらったこともあったりしました。
しかし、これらのサービスはメーカーの自主的な撤廃が進み、今ではほぼ無くなりました。
クリニックでは、開業当初はティッシュペーパーは製薬会社から貰えるので、買うことはありませんでしたが、最近では貰えることは極めて稀。数年前からは、ASKULで定期的に購入するようになりました。
以前捨てるほどあったボールペンも、この数年は替え芯をAmazonて買って、ずっと同じものを使い続けています。カレンダーも少なくなって、実際にクリニックで使う実用的なカレンダーはパソコンで印刷して手作りにしています。
もちろん食事会は一切無くなりました。たまにあるのは、内輪からの要望によるもので、もちろん費用は参加者で割り勘です。
こういう状況は、特に困るわけではありません。サービスをされても、使う気の無い薬とかもあるわけで、無駄にお金をかけられても心苦しいところもあったりしました。
また、正直言って、製薬会社の訪問も半分以上は意味が無く、時間の無駄というところでしたが、いろいろなサービスが無くなって、こちらもドライな対応がしやすくなりました。今では、訪問もだいぶ減って、それなりの意味があるものだけが残った感じ。
こういうメーカーの対応は、開業医だけに対してだけではなく、特に国公立に医療機関に対しては、より厳格です。例えば、勉強会の講師を依頼した場合、会場の行き帰りの交通費も出せません。会場で出される弁当すら、用意をできないと聞いています。
そういう意味では、今回のような逮捕者が出るようなことをいまだにやっているメーカーがあることには、正直驚きを隠せません。製薬会社と違って、機器メーカーの自主規制が進んでいないのでしょうか。自分の身近な医療業界とは、何か別世界という感じですかね。