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2017年5月20日土曜日

シューベルトのリートをチェロで聴く

5年前にMaiskyによるシューベルトのアルバムを紹介したことがあるのですが、シューベルトの歌曲をチェロのような人間の声の音域に近い楽器で演奏するというのは、なかなか相性が良くて一つの楽しみ方としては悪くない。

前に書いたときは、実はまだクラシックの歌物が苦手だったわけで、それから何故かバッハのカンタータに目覚め、何とかモーツァルトの歌劇をつついて、シューベルトのリートにたどり着いています。

そもそも、クラシック音楽というのは「限られた文化資産」みたいなもので、ある程度聴き漁ると終わってしまう。基本的に、さらなる新曲はでてこない(希に、楽譜が新発見されたりすることはありますが)。

そうなると、どうしても更なるバリエーションを求めて、編曲版を探し始めてしまうわけですが、シューベルトの歌曲についてはありそうで、意外と多くはないという印象です。

「冬の旅」はさすがに一番有名な歌曲集ですから、チェロ版、ヴィオラ版、あるいは無伴奏混声合唱版、伴奏がギター版、ピアノ・トリオ版、弦楽四重奏版、オーケストラ版などいろいろとあります。

「白鳥の歌」も「冬の旅」ほどではないのですが、それなりに探せます。「美しき水車小屋の娘」については、一部が取り上げられることはありますが、全曲通しというのはほとんど無いといってよい感じです。

三大歌曲集を離れて、その他の個別の歌曲についてはものすごく少ない。もっともリストがピアノ独奏用に編曲したものはかなりあり、ハワードのマニアックすぎるHyperionの全集だと、かなりの枚数のCDで聞くことはできます。

リストの努力には悪いのですが、歌と伴奏の両方がピアノで奏でられると、めりはりが少なく、どこが歌の旋律で、どこが伴奏なのかわかりにくくて、はっきり言って退屈。

やはり歌は別の楽器で聴かせてもらう方がどうもよさそうで、その中でも楽器としてはチェロが一番最適のように思います。そこで、Maisky以外のものを2つ見つけたました。

一つは、Alexis Descharmesのもので、これは全20曲です。三大歌曲集からは選ばれておらず、すべて個別のリートというところが珍しく、企画としての考えが見えてくる感じがします。

演奏としては、まぁたぶん普通。CDを出すくらいですから、下手ではない。実は、Descharmesはリストの珍しいチェロ曲のCDも出していて、こちらも持っているのですが、同じく普通という感じ。

いずれにしても、悪くはないので、BGM的に聴くには悪くはありませんし、歌曲のメロディをうまく抽出するという点においては合格の出来だろうと思います。

もう一つは、Anne Gastinelという女性のチェロ奏者のもの。こちらはMaiskyと同じく、Arpeggione Sonataがメインで、あまった時間をリート曲の演奏に充てている。

そもそもArpeggioneと言う楽器は、ほとんど現存していないので、この曲の演奏はチェロによるものがほとんど。言ってみれば、チェロ用編曲版ということで、こういう組み合わせは十分に理解できます。

Gastinelは新進チェロ奏者としては割と注目され有名みたいですが、見識の少ない自分はあまり詳しくは知りません。曲の選択は有名どころが中心で、Maisky盤とかぶりがけっこうあります。

自分の場合を考えると、歌物が苦手に場合は、歌物に入っていくための旋律を知るための導入編として興味深い。そして、歌物が好きな場合は、違った角度から歌の構成を再確認する応用編として掘り下げるのに聴いて損は無いかと思います。