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2022年2月15日火曜日

刑事物語 (1982)

武田鉄矢と言えば・・・昭和のおじさんからすれば「母に捧げるバラード」ですけど、昭和のこどもたちなら「3年B組金八先生」ですかね。ただし、俳優としてのデヴューは「幸福の黄色いリボン(1977)」で、すでに今の味のある「武田風」が出ていました。

金八先生カラーが付いてきた武田が、新しい一面を模索して自ら考えたのがこの映画。敬愛するジャッキー・チェンに触発されて、自ら脚本を書いて人情に厚いがひとたび暴走すると暴れまくる風変わりな刑事像を作りシーリーズ化されました。

これがその第一弾で、マドンナ役はこれがデヴューの有賀久代で、聾啞者の難しい役をかなり頑張ってこなしていると思いますが、この映画1本だけで「自分には演技の才能は無い」と芸能界をやめてしまいました。

博多で刑事をしていた片山元(武田鉄矢)、風俗店に踏み込んで大暴れしてしまいます。片山は沼津に配置転換されることになり、店で検挙した聾唖者の三沢ひさ子(有賀久代)の身元引受人になって一緒に連れていくのでした。

沼津では素人女性が組織売春に巻き込まれ殺害される事件が3件未解決になっていて、片山は早速その捜査に加わります。この警察の仲間になるのが、仲谷昇、小林昭二、樹木希林らのそうそうたるメンバー。昔馴染みでいろいろ情報を教えてくれるのが花沢徳衛、アパートの管理人は初井琴榮だったりします。

素人娘を売春に誘い込む巧妙な手口を使う連中は、ひさ子にも手を伸ばしてきます。片山は、ついに組織の手口がわかり、誘拐されたひさ子を助けるために乗り込んでいくのでした。

何と友情出演で、片山をだまして逃亡する詐欺師に西田敏行、ひさ子に思いを寄せるアパートの隣人に田中邦衛が登場。さらに、さらに、何と片山と入れ違いに転勤してきた刑事は高倉健という豪華なおまけがつきます。しかも、高倉は前年の「駅 STATION」の役名である三上英次を名乗るあたりは、くぅ~たまらんの世界。

何と言ってもこの映画で一番有名になったのは、武田鉄矢のジャッキー・チェン風の蟷螂拳(とうろうけん)の使い手で派手に決めるところ。特にヌンチャクのかわりに洋服のハンガーを使ってチンピラを叩きのめすシーンは名物になりました。

人情味に溢れるちょっと変わった人間が、恋したマドンナのために頑張るけど恋は成就しないというところは、まさに「トラさん」風の昭和の典型的な娯楽映画の作りです。予想通りの展開ですけど、そこが安心して楽しめるポイント。けしてイケメンじゃない(スミマセン)武田鉄矢が、やたらとかっこよく見えてくるから不思議です。

最後のシーンで夕陽に照らされる埠頭のバックに流れるのは、吉田拓郎の「唇をかみしめて」で、武田鉄矢の直接の依頼に答えて書き下ろされたもの。実に映画とマッチして昭和の雰囲気を盛り上げてくれます。