2022年2月28日月曜日

たらこスパゲッティ


日本で人気のあるパスタ・メニューで、純国産の唯一無二の存在がたらこを使ったもの。

1953年に、「壁の穴」という名の日本で初めてのパスタ専門店が、成松孝安によって新橋に誕生しました。最初はミートソースだけのメニューでしたが、しだいにイタリア料理店らしくなって、1963年に渋谷に移転。

その時に客がキャビアを持ち込み、これでパスタを作ったところ好評でした。キャビアでは採算が取れないので、代替えとして思いついたのがたらこでした。成松は他にも多くの和の食材を使ったレシピを考案し、「和風スパゲッティの元祖」と言われています。

前にも書きましたが、自分が初めてたらこスパゲッティを食べたのは70年代、高校生の時だったと思いますが、表参道と明治通りの交差点にある八角館ビルの壁の穴支店の方でした。ちなみにここは、元々八角亭という焼肉店(確か二階建ての建物)があったところ。

まだパスタという言葉は知られていなくて、スパゲッティと言えばナポリタンとミートソース(とごくまれに塩味のイタリアン)しか知らなかった時代に、このたらこのスパゲッティは衝撃的な美味しさでした。大袈裟かもしれませんが、目の前で信じていた常識が一気に覆されるというショックみたいなところ。

今では、たらこだけでなく明太子を使ったり、クリームを使うもの、チーズを使うものなど、元祖壁の穴から発展してさらに美味しさを極めるバリエイションも豊富な定番メニューになっていますね。

基本的に茹でたパスタにたらこをほぐして和えるだけという、レシピにもならないようなものだと思っていたので、今までは作り方はかなり雑でしたし、当然市販のソースでもかまわないという感じ。

ところが、有名店であるHATAKE AOYAMAのオーナー・シェフ、神保佳永シェフの「明太子スパゲッティ」の動画を見て驚いた。一見、簡単なレシピでも、プロの料理人はこんなに気遣いをしていることを初めて知りました。とりあえず、できるだけ同じ手順で真似てみようというわけで・・・

たらこの量は、標準的なサイズが1/2腹で一人前という感じ。たらこの薄皮は取り除きます。まな板の上で包丁でしごくように、卵だけはずしていく・・・というのは、これはやってました。プロもやってた・・・って何か嬉しい。

でも、ここからは違う。常温で柔らかくした無塩バターをゆっくり混ぜていきますが、たらこの粒を潰さないようにやさしくじっくりなでるようになじませる。さらに昆布茶の粉を入れる!! バターはたらこと同じくらいのボリュームを使っていましたが、自分は半量ぐらいにしてオリーブ・オイルを代替えに使いました。

次に入れるのが醤油。へぇ~、醤油入れるんだ。さらに入れるのがレモン果汁!! えっ、レモン入れるんですか(一人前で1/3個分)。で、驚くばかりのソースの出来上がり。普通はパスタはとっくに茹で始めていて、ソースができる頃には茹であがっているんですが、ソースをしばらく寝かせて味を落ち着かせるため、パスタはこれから茹でる。

ここでも驚くことは、パスタは何と指定された時間より長く茹でるということ。そして、たらこの塩味が強いので、茹で汁に塩を入れないこと。普通はアルデンテの歯ごたえを大事にして、少し早めにあげてソースと絡めながら火を通していくのですが、たらこスパゲッティは茹であがったらすぐにソースと和えて皿に盛るだけ。刻み海苔をのせオリーブ・オイルをかけたら完成です。

ちなみに元祖「壁の穴」の現シェフの記事がネットにありますので、そちらも参考にしてますが、昆布の粉は使いますが、元祖はレモンは入れていない。レモンを使うのは、神保シェフのお父さんのレシピだそうです。

レモンで酸っぱいんじゃないかと心配しましたが、食べてみると・・・味が締まる感じで、キリっとしました。言われないとレモンはわからないかもぐらいの感じ。基本的にはたらこの味なんですが、隠し味の昆布茶と醤油が、たぶん深みを出しているのかな。

たらこの味がしっかりしているので、パスタは太目のものが合いそうです。あまりに美味し過ぎて、今まで作ってたのは無かったことにしたいくらいになりました。