2011年6月13日月曜日

D.Hardy & L.Orkis / Beethoven Cello Sonatas

企画としては面白い。クラシック音楽というと、直球勝負であることが多いのですが、時々こういうセットを見つけると、なんか嬉しくなります。

と、いうのは、これCD4枚。ベートーヴェンのチェロソナタは全5曲、その他に変奏曲が3曲あって、通常すべてをまとめてもCD2枚で余裕で足りてしまう。

このセットは、実は全8曲がそれぞれ2回収録されている。CDのタイトルも''Past & Present''というくらいで、古楽器を用いたバージョンと現代楽器を用いたバージョンが収録されているのです。

古楽器バージョンというのは、作曲された19世紀の時代に使われていた楽器(の複製)を使用しているわけで、実際にベートーヴェンがイメージしていた音に少しでも近い演奏ということ。

確かに厳密に言えば、楽器としては現代のものとは違うわけで、より作曲者のイメージを正確に伝えるという意味では意味がある。例えば、バッハのオルガン曲をエレクトーンで演奏しても、あまりピンとこないものです。

演奏しているDavid Hardyは1982年にチャイコフスキー・チェロ・コンクールで受賞してから頭角を現したアメリカ人。比較的安定した、オーソドックスな演奏で、安心して聴き続けることができます。

それよりも、ピアノのLanbert Orkisの名前が、先にクレジットされていることに注目です。オルキスはヴァイオリンのムターとのコンビが有名。オルキスのほうが、より知名度が高いし年上ですが、おそらくこの企画がオルキスが主導したということなのでしょう。

また、ベートーヴェンのソナタが、チェロソナタと言ってもピアノが対等な立場でせめぎあう性格が強いことをよくあわらしているとも言えそうです。全体的には、大変安心して聴ける大人の音楽という印象です。

バージョンの違いは・・・確かに音は微妙に違うのですが、正直にいうと楽器の音の違いは音楽の本質からすると2番目以降の要素と感じました。あまり、大きな問題ではないように思うんですよね。

もともと、自分が古楽器にこだわっていないから、よけいにそう感じるのかもしれませんが、音楽の良し悪しは演奏そのものによるところが大きく、現代楽器に耳が慣れているので、楽器の差はどっちでもいいかと再確認したわけです。