2010年11月8日月曜日

Stanley Cubric / SHiNiNG

冬来たりなば・・・寒くなってきました。いまだに半袖のワイシャツを着ているというのも、ずいぶんノー天気な自分ですが、さすがに上着は必要。なにしろ、昨日は立冬でしたから。寒くなってくると、空気が乾燥してきてそろそろ静電気が気になる。何かに触るたびに、パチっとなって痛いのでいやぁ~なものです。

さて、冬の映画というのもいろいろあるわけですが、心温まる系もいいけど、全編「雪に閉ざされた密室」と化した状態が、けっこうなサスペンスを生み出すのです。

推理小説でも、金田一耕助が探偵デヴューした「本陣殺人事件」は、密室になりにくい日本家屋を雪で囲むことで,実質的な密室を作り出すことに成功した作品として有名です。

話を元に戻すと、この雪に閉ざされた世界を効果的に使ったのが、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング(1980)」です。スリラー小説家のスティーブン・キングの原作を元にしてはいますが、キューブリックは大幅に内容を変えて、もうほとんど偏執狂キューブリックのオリジナル作品と言ってもいいくらい。

キングはこの作品を原作から大きく変更されたのが気に入らず、後年自分で監督してドラマ化しましたが、あまりに間抜けな出来映えで箸にも棒にもかかりませんでした。

なんといっても、主役のジャック・ニコルソンがいい。「イージーライダー」、「カッコーの巣の上で」と順調に70年代アメリカの狂気を演じてきて、ついにこの映画で完全に自ら狂人となって、家族に襲いかかるようになりました。そのすさまじい演技は、わかっていても背筋がぞっとするような迫力があります。

キューブリックは、まったくぶれずに移動していくカメラワークを多用して、静寂の中にすこしずつ恐怖の伏線をはりめぐらしていきます。最後の雪の迷路の中での追いかけっこでは、一気にたたみかけるように見ている者を恐怖のどん底に陥れていきました。

そして、まったく原作を無視した結末。狂気が満ちた古ホテルの中に取り込まれてしまったニコルソン。見終わった後も、じわーっと恐怖が後を引く最高の演出ではないでしょうか。

すでに30年前の映画ですから、もはやホラー映画としては古典の範疇に入ってくるわけですが、心理的な恐怖をあおっていく手法は、この後のいろいろな映画への大きな影響を与えたといってもいいのではないでしょうか。

あー、なんか書いていたら、無性にまた見たくなってきました。