夏季臨時休診のお知らせ

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2010年11月6日土曜日

診断書

以前、大学にいたときに診断書料でどのくらい儲かっているのか調べさせられたことがあります。

診断書を書くことは「医者の義務」でして、正当な理由無しに断ることはできません。診断書は「公文書」であり、そこに記載されたことに対しては、医師は法的な責任をもちます。

しかし、診断書を書くことに対しては、自費による報酬を受け取ることができるので、その値段については各医療機関の裁量に任されています。通常は3000円程度というのが一般的ですが、あとは書くことが多い物については5000円程度までの中で値段が決まっていると思います。

うちの場合も、おそらくごく一般的な値段の設定をしているわけですが、ほとんど支出もなくまるまる収益になるというわけですから、正直言って大変助かる話であります。

ところが、勤務医をしていると普通はいくら診断書を書いても、その分書いた医者にはまったく収入として入ってくることはありません。診断書をせっせと書くというのは、実際時間がけっこうかかる物で、その労力はバカにはなりません。

整形外科は、診断書の多い科としてだんとつの実績を誇っているのが普通です。交通事故関連、労働災害関連、身体障害者の診断書、障害年金の診断書、生命保険の診断書など、それはもう数えたらきりがありません。

そこで、当時の大学の医局長が、どれだけ大学の収入に整形外科が貢献しているかという資料の一つとして、文書料の科ごとの額を知りたがったというわけです。

数字は、もうほとんど忘れてしまいましたが、1年間で整形外科から得られた文書料は2千万円くらいあったと思います。1枚3000円とすると毎月550枚くらい。たぶん、一人の医者が毎日数枚書いているような感じでしょうか。

第二位は脳神経外科で、文書料は数百万円。第三位は一般外科でやはり数百万円。あとはどの科もわずかなものでした。

例えば、心臓の手術とかで、一人の患者さんから数百万円の収入が得られたとします。実際は、いろいろなコストのかかる支出をともなっているので、利益率はそれほどたいしたことはありません。ところが売り上げだけはものすごい額になるので、病院内での評価は高くなります。

整形外科は薬をあまり使いませんし、検査もそれほど無いので、売り上げは少ない科の代表みたいなものです。ところが、そのかわり支出はほとんど無く、医者の技術が頼りみたいなところがあるのです。

今の日本の保険医療というシステムは、昔に比べれば少しは改善されたとはいえ、技術・技量という目に見えない物には評価がされないという、何ともやるせないところがあんですよね。

例えば教授が診察しても、研修医が診察しても値段は一緒。整形外科が、どんなに利益率を向上させても、売り上げでしか評価されないというのが、けっこう辛いところがあるんです。

大学で診断書料を調べてからは、診断書の頼まれたら可能な限りその場で書くようになりました。よほどの物でなければ、数分で書くことができます。患者さんが立て込んでいる場合でも、預かってその日に書き終わるのを原則としてきました。ためてしまうと、自分が大変になるだけなのです。

今は、さすがにそれほど多くはないので、あまり診断書を書くことが苦痛では無くなりましたし、そもそも書けば書いた分自分の収入につながるわけですから、一生懸命書かせていただいています。