2014年5月6日火曜日

バッハはプロテスタント

やはり宗教曲を聴いていくとなると、どうしてもキリスト教の歴史みたいなものは避けては通れない感じです。とは言え、聖書を読み込んだりするのはちと辛い。如何せん、キリスト教とは無縁の、なんちゃって仏教徒みたいなものですから。

そこで、いろいろと宗教曲関連のネット検索をしたり、書籍を探して多少なりとも知識を増やしてみたわけです。それで、まったく意識していなかったんですが、バッハはプロテスタントだったんですね。

もう、今更何を言っているんだと叱られそうな話ですが、キリスト教は大きく分けると本家のローマ・カトリックと、16世紀はじめにマルチン・ルターの宗教改革によって生まれたプロテスタントがある。

ガーディナー先生はイギリス人ですが、イギリスにはその中間の立場である聖公会というのもあるんですね。細かいところを調べると、いろいろな分派があってわけがわからない。

とりあえず、音楽を楽しむ上では、カトリックとプロテスタントの二大派閥に絞って理解しておくくらいで何とかなりそうです。カトリックはラテン語を用いた典礼を行いますから、ミサで使われる曲の歌詞は原則としてラテン語。

つまりミサ曲というのは、基本カトリックのもので、作曲しているのはカトリック信者がほとんど。モーツァルトしかり、ベートーヴェンしかり。ただ、シューベルトやブラームスの頃になってくると、考え方も多少変わってきたのか、ドイツ語のレクイエムを作曲したりしてます。

一方、プロテスタントは「もっと聖書に立ち返ろう」、「もっと皆がわかりやすいようにしよう」が合言葉みたいなもの。カトリックでは専門の聖職者のみが歌いますが、プロテスタントは皆で歌おうというもの。

ドイツのバロック音楽は、イタリアから技法を勉強してきたシュッツにより、プロテスタントの考え方に基づいて始まったもので、教会内では少ない人数でも皆で歌うコラールというものが発展します。

そこでプロテスタントのバッハの音楽は、当時すでに時代遅れになりつつあったコラールを重視して、ルターのドイツ語の聖書からとられた歌詞に曲をつけるカンタータや受難曲が中心になってくるというわけです。

多くの宗教曲がラテン語なのに対して、なんでバッハはドイツ語なんだろうという漠然とした疑問がやっと解決しました。ただし、バッハには人生最後の大曲であるロ短調ミサ曲というのがある。

すでに書いたように、ミサ曲はカトリックのものですから、プロテスタントのバッハがなんでミサ曲を書いたのかというのは大きな謎であり問題です。ただ、これは長くなるのでまたの機会にします。

今日は、最後に日本が誇る世界が認めるバロック奏者、鈴木雅明のアルバムを紹介しておきます。これは''Bach & Beyond''と題された15枚組のボックスで、バッハのカンタータや受難曲以外から、バッハの周囲の音楽を紹介するもの。ボックスですから、かなり破格の値段で見事な演奏の数々を聴く事ができる超推薦盤です。