2015年4月19日日曜日

リウマチはどこを受診すればいいのか

リウマチが心配なんですが、内科と整形外科のどっちに受診すればいいのでしょうか?

・・・という質問は多いです。実際、最初に何科を受診すればいいのかということは、リウマチに限らず一般の方からすれば、本当にわかりにくいことだと思います。

これは、医療機関が公平性の観点から、極端に広告の制限を受けていることが一番の原因だと思います。

もちろん、医療機関も患者さんを集めたいということで、少しでも間口を広げようとして標榜する診療科をたくさん出す傾向にあることも関係します。

医療に必要な知識は、年々膨大な量になっており、また医療行為による結果についても以前に比べて厳しく見られるようになった現代では、一人の医師が複数の診療科を診るということは、現実的には不可能です。

したがって、ホームドクターと呼ばれるような、広く浅く診療を行い、必要に応じて専門の医療機関へ紹介する医師と、ある特定の領域を中心に診療を行う医師に分かれていることになります。

一方、基本的に外来のみの診療を行う医師と、入院しての診療を行う医師にも分かれています。つまり、診療所と病院です。これらの役割分担が、まずはっきりしていないといけません。

なおかつ専門性が明示されれば、患者さんはおのずとどこに受診するかわかりやすくなるはずですが、残念ながら標榜する診療科は、旧来の体の部位別に分けられたもので情報が限定されています。

現代では、専門性については部位別の考え方以上に、疾患の種類別が重視されるところがあって、病気についても縦のつながりだけでなく、横にもつなげないとなかなかピンポイントで的を射ぬけません。

整形外科について言えば、もともと何を診る科かわかりにくい。一言でいうと、運動器に関係する疾患や外傷を扱うということですが、そもそも運動器って何?ということになります。

体を動かすための手足、そこに信号を送る末梢神経とそれが集まった脊髄、実際に動く筋肉、体全体を支える骨格などなどが運動器と呼ばれます。

部位別の専門だけでも、整形外科のなかで大きく脊椎・脊髄外科(主として背骨)と関節外科(主として手足)に分かれていますし、関節外科でも上肢専門と下肢専門があり、場合によっては各関節ごとに専門が分かれたりします。

疾患ごとの病気の分類は、先天性、感染性、炎症性、免疫性、腫瘍性、外傷性・・・などなど、たくさんありますが、部位別と組み合わせると、もう医者である自分も何が何だかわからない状態です。これを、一般の方に理解しろということ自体が無理があります。

さて、本題の関節リウマチという病気ですが、体のあちこちの関節に対して、自分の体に異常なアレルギーを起こして関節炎を起こす病気です。その結果、関節部分で骨が壊れて、変形を起こします。

つまり、もともと体の手足に発症するので、部位別で考えれば整形外科のジャンル。しかも、変形すると装具療法(サポーター)や手術療法、あるいは理学療法(リハビリテーション)が必要になりますので、まさに整形外科の独壇場・・・みたいなところがありました。

しかし、リウマチ患者さんには、多くの全身の合併症が出る場合がありますし、抗リウマチ薬の治療が進歩して、副作用を厳重に管理する必要が出てくると、特に血液・肺・腎臓・肝臓などの状態を厳しくチェックする必要が増してきて、内科的な側面が重視されるようになります。

整形外科側の立場からすると残念なことではありますが、強力な薬の登場によって変形を起こすことが少なくなった今では、内科的な管理の方が重要性が高いと云わざるをえません。

さらに残念なことは、実際にリウマチ薬の怖い副作用などを知らずに、漫然と処方だけしている整形外科医が多数存在することは否めません。

ただし、どんな薬が良くなっても、完全に病気を鎮圧できるところまでは行っていないわけで、ある程度の変形は必ず生じるものです。内科のリウマチ医の中には、薬に頼りすぎて変形に対して無力な場合もあるわけです。

よく言われることですが、整形外科医はレントゲンしか見ない、内科医は検査結果しか見ないという批判が依然として存在することは、リウマチ医として恥ずべきことだと思っています。

さて、冒頭の質問の答えです。

日本の医学教育は、基本的に診療科ごとです。それまで勉強してきた診療科の知識のベースの上に、さらに関節リウマチという病気に関わる知識を積み上げているのがリウマチ医です。ですから、リウマチが心配な時に受診するのは、内科の場合も整形外科の場合も正解であるということになります。

また関節リウマチは、基本的には入院して行う検査や治療はありません。診断に必要なのは、単純レントゲン、超音波などの画像検査と血液検査ですし、治療を開始後も同じです。ですから、リウマチを専門にしている医師がいる医療機関であれば、クリニックでも病院でもかまいません。

ただし、合併症や重篤な薬の副作用が出た場合、あるいは手術が必要な状況においては、入院設備が必要になる場合がありますので、リウマチ専門のクリニックは提携先を持っている必要があります。

リウマチ科という診療科の標榜は医療機関の自由な自己申告であるわけで、本当にリウマチを専門にしているかどうかは問わないというところが問題です。根本的に医師免許はオールマイティであり、車のオートマ車専用免許のようなものはありませんから、当然と言えは当然なのですが。

リウマチを専門にしているかは、医者同士ではちよっと話をすれば簡単にわかることですが、その辺を表だって広告することは法律で禁止されています。

例えば、病院の広告を出すときに、写真に医療器具が写っていてはいけません。これは、その器具を使った診療ができるということを意味し、写っていないところでは、その器具が使えないと解釈されてしまうからだそうです。

一理あるといえばそれまでですが、あまりにもばかばかして話です。そこで、巷によくある医療機関を紹介する冊子では、広告ではなくて取材記事という体裁をとることで、各医療機関の特色を明示するようにしているわけです。また、比較的自由がきくホームページ(とは言っても、以前に比べるとだいぶうるさくなりました)も、専門性を確認する材料として有効です。

自分のことを言うと、およそ15年間は一般の整形外科、とくに上肢を中心に大学病院で勉強しました。半分は外の一般病院に出向し、背骨や下肢の診療にも携わりました。

そのあと、関節リウマチ専門施設 - 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターに所属して、ほぼリウマチだけを5年間勉強したあと今のクリニックを開業しています。

クリニックでは、およそ10年間、リウマチと一般整形外科を半々で診療しているという状況で、女子医科大学の非常勤講師も続けさせてもらって、リウマチに対するモチベーションを保つようにしています。

また、近隣の先生方との定期的な勉強会に参加して、リウマチ診療の中での病診連携(病院と診療所)および診診(診療所と診療所)連携を深めるようにして、それぞれの医療機関の特に得意とする部分について協力してやっていけるように努力しています。

あとは、受診する方の判断しかありません。なかなか、わかりやすく説明しずらいところなので、これを読んだとしても、それでもどこに受診するか迷ってしまうかもしれませんが、少しでも参考になればと思い長文を書いてみました。