「置かれた場所で咲きなさい」は、ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さんの有名な著書のタイトル。
渡辺和子さんについては、昨年テレビで紹介されているのを見ました。それまで、ほとんどどういう方なのか知りませんでしたが、人のあり方についてお仕着せがましさはなく説く姿には感銘を受けました。
1927年生まれで、9歳の時に二・二六事件の現場に遭遇。目の前で、陸軍教育総監だった父親が、押し入ってきた青年将校らによって射殺されるという衝撃的な体験をされました。
その後キリスト教の世界に入り、女子教育のために尽力する中で、自分の中にある父親を殺した者たちへの憎しみも捨てきれずにいたそうです。
「憎しみを花に変える」ことの難しさは、自らが熟知されているわけですが、50年の時を経て処刑された犯人の遺族の法要に出席し、その困難を克服されました。
2012年に出版された「置かれた場所で咲きなさい」は、いろいろな不満があっても、まず自分の今の状況を克服して花を咲かせる努力を怠らないことを説いています。
一見、受け身的な生き方を勧めているようですが、おそらく置かれた場所で花を咲かせることができれば、その次には種が周囲に広がっていくということなんだろうと思います。
また、どうしても花を咲かせられない時でも、心配せず「咲かなくても大丈夫」というメッセージも合わせてあることが、救いになるんでしょう。
自分の生き方をもう一度点検するために、渡辺さんの言葉は十二分に拝聴に値するものばかりです。
現代日本は言うに及ばす、世界中が協調を欠く時代です。花をつけずに、ましてや根を下ろさずに、自我のみが突出することが多い。様々な世代で、渡辺さんの著書を一読する価値は違うかもしれませんが、何かを得ることが必ずできるものだと思います。
渡辺さんは昨年末、12月30日に89歳で永眠されました。心よりご冥福をお祈りいたします。