2021年12月7日火曜日

コンティジョン (2011)

原題の意味は「伝染、contagion」と言う意味で、怖いバイオ系SFという位置づけの映画。新型コロナウイルスによるパンデミックが起こった現在では、あながちフィクションと簡単に片づけられなくなって、注目度が上がった作品と言えます。

監督は「オーシャンズ11」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ。サスペンス系は得意でここでも手堅くまとめ上げたという感じでしょうか。

この映画は「DAY 2 (二日目)」から始まります。世界各地で、咳や倦怠などを発症する人々が現れます。2日後、ミッチ・エムホフ(マット・デイモン)は香港への出張から帰宅した妻のベスが原因不明で亡くなり、家に帰るとこどもも同じように息を引き取っていました。スイスに本部がある世界保健機構(WHO)も、事態を把握しレオノーラ・オランテス(マリオン・コティヤール)を香港に派遣し感染源の特定作業に取り掛かります。。

アメリカ国内でも、CDC(疾病予防管理センター)のチーヴァー(ローレンス・フィッシュバーン)らが、死亡者の検体の調査に着手していました。豚とコウモリの交差した新種のウイルスMEV-1が確認され、現状の致死率は20%でした。チーヴァーの部下のエリン・ミアーズ(ケイト・ウィンスレット)はエムホフの足取りを追います。

民間のサッスマン博士(エリオット・グールド)はコウモリの細胞を使って培養することに成功し、CDCのアリー・ヘクストール(ジェニファー・イーリー)がワクチン開発へのきっかけとなると考えていました。その一方で、SNSを活用するフリーのライター、アラン・クラムウィディ(ジュード・ロウ)は、ブログに知りえた真偽不明の記事を投稿し、市民に不安を拡散させていました。

14日目。現地の手配に奔走していたミアーズが発病して死亡。香港のオランティスは、香港の役人にワクチンを優先的に貰うための人質として拉致されます。ついに町では略奪が始まり町も封鎖されました。クラムウィディは、チーヴァーが女友達を街が封鎖される前に脱出させたことを暴露し立場を悪くさせます。

1か月を過ぎた頃、ヘクストールは効果が期待できるワクチンを、治験などをしている時間を節約するため自らを検体として試しました。4か月、誕生日で抽選した人がワクチンを打てるようになりました。そして、少しずつですが日常が戻ってくるのでした。

あくまでもフィクションですが、まるでドキュメンタリーのように淡々とシーンを積み重ねていきます。このような手法はモキュメンタリー(mockumentary)と呼ばれます。構成は起 - 感染者出現、承 - 感染拡大、転 - ワクチン発見、結 - 終息、という具合ですが、かなりその起伏は低めで、大きな山はありません。

しかし、だからこそじわじわとウイルス感染拡大の恐怖がひろがり、その時人々に起こる様々な心や行動の変化が現実味を帯びてきます。おそらく10年前のリアルタイムでは、あくまでも映画と思って鑑賞したでしょうけど、現実のパンデミックを経験した今ではほとんど世界の縮図を見る思いになります。

WHOとCDCという二つの大きな組織が中心になり、そもそもの感染者の調査、病原体の特定と分離・培養、ワクチン精製などが行われる過程はまさに実際と同じ。中には、自ら感染して命を落とすスタッフもいる中で、彼らは必死に解決に向けて努力している。

その一方で、その過程には陰謀があると批判する人がいて、SNSの活用によりデマが拡散し力を持つようになります。公的な発表は信じないくせに、そういう風評だけは信じてしまうというのも現実にいくらでも起こっていることです。

映画として名作とは呼びにくい作品ですが、良作として今だからこそ現実を客観的に見つめ直すための一助としてお勧めしたいと思いました。