シャーリーズ・セロン主演のアクションSF映画で、ピーター・チョン原作の短編アニメを原作として実写化したもの。ガールズ・アクション物は、いつもかなり辛口の評価が下される例にもれず、この作品も評判は良いとは言えません。特に、女性で日系のカリン・クサマ監督の趣味・趣向がやり過ぎ感があることと、制作会社が監督の意思とは別に大幅にカットしたことが、作品の質を落としたと言われています。
2011年にウイルスの拡散により人類の99%が死亡し、トレヴァー・グッドチャイルド博士が開発した治療により、生き残った人々は最後の都市、ブレーニャに集まりました。以来、400年に渡りグッドチャイルド家による支配が続き、汚染された外界と隔絶する高い城壁に守られた生活を続けていました。
ブレーニャの街では、突然消失する女性がいて、政府が関わっていると考える反政府組織モニカンに属するイーオン(シャーリーズ・セロン)は、政府の監視施設の破壊を命令されます。しかし、自分と接触した妹のウナも殺されてしまいます。続いて、グッドチャイルド自身の暗殺を指令されました。
両足も手にしてしまったシサンドラ(ソフィー・オコネドー)と共に議会に潜入したイーオンは、演説のリハーサルをするトレヴァー・グッドチャイルド(マートン・チョーカシュ)に銃を突きつけますが、「キャサリン、本当に君か」と言われ躊躇した隙に捕えられてしまいます。
トレヴァーを暗殺するための情報をモニカンに流していたのは、兄の地位を狙うトレヴァーの弟オーレン(ジョニー・リー・ミラー)でした。脱出したイーオンでしたが、トレヴァーからのメッセージで再び再会し、どうにも抗えない思いによって一夜を共にしてしまいます。
イーオンは、ウイルス治療の副作用で人類が不妊になったため、以来代々クローンが生まれ入れ替わっていったことを知り、イーオンはトレヴァーの妻のクローンだったのです。しかし、次第に不妊が自然治癒し始め自然妊娠が起こるようになったため、オーレンは自らの永遠の命を守るために妊娠した女性を殺害していたのでした。オーレンは、トレヴァーがモニカンに寝返ったとして二人の抹殺を命じます。
まず、監督の出自に日本が関わっているせいだと思いますが、随所にみられる中途半端な「日本風」がどうもピンと来ない。アメリカ人からするとエキゾチックで、異国風な未来ということになるのかしれませんが、日本人的には腰が引けてしまいます。
政府の警備員は変な忍者みたいな格好ですし、400年も未来なのに日本風の一般家庭とか想像できません。ラストで桜並木はきれいで印象的ですが、本当にこの場所に必要かと疑問に思うところがあります。
そのあたりを横においても、ストーリー的にはいろいろなことが簡単過ぎる。モニカンの存在についてもあまりに説明不足で、一体何に対して反対しているのかよくわからない。トレヴァーさんも政府のトップにしてはあまりに無防備。クローンの作り方にしても、だったら普通に人工授精でよくないと言いたくなる。
全体にスタイリッシュな映像というところでは点をあげたいところですが、頭でっかちになっていて世界観を生かしきれていないようです。見た目の(未来的な)斬新さだけにとらわれて、中身のない空っぽ感が半端ない。
少なくとも、シャーリーズ・セロンのナイスなヴィジュアルを堪能できるのが唯一のポイントで、アクションも及第点のがんばりのようです。観客のアクション映画の主人公が女性だからダメという古臭い価値観ではなく、かっこいい女性を生かしきれない作り手に問題がありそうです。