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2021年12月18日土曜日

マウス・オブ・マッドネス (1994)

怪奇の世界を描くなら、やっぱりジョン・カーペンターは外せません。SFやホラーと呼ばれる幾多のかけの作品は、名作・珍品ぞろい。これは、カーペンターを否定しているわけではなく、独創的な世界は他の追従を赦さない唯一の物だということ。

この映画は、純粋にホラーと呼べそうな作品で、スティーブン・キングをモデルにしているっぽいサター・ケインというホラー作家の失踪にまつわる恐怖を描いています。

ケインの作品の読者は、小説の世界に洗脳されたかのように異常行動に走ることがあるらしい。しかし、ある時ケインは失踪し行方不明になります。出版社は保険調査員であるジョン・トレント(サム・ニール)に調査を依頼し、出版社のケインの担当をしていたリンダ・スタイルズ(ジュリー・カーメン)と共に、ケインの本の記述を手掛かりに調査を始めました。

ケインの小説の舞台となっている町にたどりついた二人は、まるで小説の中と同じような現象に遭遇し、スタイルズはしだいに狂気に取りつかれていくのです。教会に隠れていたケイン(ユルゲン・プロホノフ)を発見しますが、すべては私が書いた世界であり、トレント自身すら私の登場人物の一人なのだと説明します。

そして、君がこの世界の終わりを書いた最後の小説の原稿を持っていくのだと言われますが、トレントは原稿を読まずに処分します。闇から出現する怪物に追われるように逃げ出すトレントは、気が付くといつもの街に戻っていて、出版社ではスタイルズという社員はいないと言われ、ケインの最後の小説はすでに出版されていました。

現実と小説の境界がわからなくなったトレントは、精神病院の隔離病棟に収容されていて、これまでの話を医師に話し終えました。街ではケインの小説を読んだ人々が暴動を起こし、狂気はどんどん拡大していくのでした。

出版社のお偉方を演じているのは、御大、チャールトン・ヘストン。またケイン役もユルゲン・プロホノフという名優が演じています。主役は「ジュラシック・パーク」シリーズでも有名な、サム・ニールが手堅い演技で見せてくれます。

恐怖演出は、やや定型的で、突然画面に入って来る物体と音響が中心。怖さだけを求めるとかなり評価は下がりそうですが、現実が実は小説の世界で、小説の世界が現実になっていくという複雑なプロットが秀逸です。書き換えられると現実も変わるので、話が複雑になっていきますが、トレントの視点のみに集中することで比較的整理されている感じがしました。

この映画の中には、1920~30年代にハワード・フィリップス・ラヴクラフトらが創作した「クトゥルフ神話」に登場する名詞が随所に登場しているらしい。クトゥルフ神話は、ファンタジー系の各種メディアには、連綿と受け継がれ引用される強い影響力を持っていて、代表的な作品としてラヴクラフト作の「狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)」があります。