これはSFじゃない・・・んですが、近年のホラー映画の中では評判をとった作品。あえて分類すると青春ダーク・ファンタジー・ホラー なんていう言い方があっているかも。もしかしたらホラー版「スタンド・バイ・ミー」というのは・・・おや、そういえば作者も同じスティーブン・キングです。
スティーブン・キングといえば、アメリカン・モダン・ホラー小説の大家。この原作も1986年に刊行された、今では初期の長編という扱い。タイトルの「それが・・・」は、まったくの日本独自のものですが、it という代名詞だけではよくわからないところを、言いえて妙という副題をつけたと褒めておきます。
原作も2部構成で、1990年にテレビのミニ・ドラマとして最初の映像化がされ、全体を3時間で作り上げ評判だったようです。今回は、最初から前編・後編に分かれていて、この作品の最後に「CHAPTER ONE」と明示されています。
デリーの町でこどもが行方不明になる事件が多発。ビリーの弟ジョージーもその一人で、ビルはそのことに強い責任を感じています。太っているベンは転校生で周りになじめず、いじめっ子グループにもめを付けられている。ベバリーも男好きと悪い噂ばかり立てられ、父親からも性的虐待を受けています。他にもリッチー、スタンリー、エディ、マイクらも心に何かしら劣等感や恐怖心を隠していました。
ベンが図書館で調べると、この街には27年ごとに大量に人が消える事件が発生しており、彼らの目にも恐怖を持ってくる踊るピエロ、ペニーワイスが次々と姿を現すのです。いずれの事件でも下水道が関係していると考えた彼らは、下水道が川に出る手前で集まる場所の上に建っている朽ち果てた洋館が鍵と考え乗り込むのでした。
監督のアンディ・ムスキエティはアルゼンチンの人。音響や映像は定型的なホラー映画を踏襲しているところはありますが、恐怖よりもファンタジー色が強く、「負け犬クラブ」のこどもたちの成長が主題にある感じで、勇気を振り絞って友情を堅持し、悪夢に立ち向かっていくこと、そして仲間を信じ切ることの大事さを描いていきます。
次々と残忍な人殺しが続き血が飛び散る、いわゆるスプラッター映画とか、ただひたすら死んでも死んでも生き返るゾンビ映画などは好みではないので、こういう作品は歓迎です。それらしてもピエロは、普通は滑稽な雰囲気ですが、話によっては哀愁をたたえ、ここでは本当に不気味な存在として強烈な印象を残しました。