さて、いきなりですが問題です。
ロック史上で世界で最初にいわゆる「海賊盤 (bootleg)」と呼ばれる、非公式発売のレコードが登場したミュージシャンは誰でしょうか。
ヒント・・・登場したのは1969年夏。タイトルは「Great White Wonder」で、誰の演奏なのかは表記されないタイトルだけの白いジャケットでした。
では、今では必須と言えるミュージック・ビデオですが、これを世界で初めて作ったアーティストは誰でしょうか。
ヒント・・・ビートルズだとか、いやいやマイケル・ジャクソンだとか言われていますが、1965年に公開されたもので、手書きの歌詞の断片を書いたたくさんの紙を、本人が歌に合わせてめくっていくというものでした。
それでは、最後の問題。2016年に世界で初めて、ミュージャンで歌詞が評価されノーベル文学賞を受賞したのは誰でしょう。
これはかなり話題になった有名な話なので、本人に興味が無い人でも、このニュースには驚いたことと思います。
そうです。いずれも答えはボブ・ディランです。
ボブ・ディランBob Dylan、本名はRobert Allen Zimmerman。1941年5月24日、アメリカのミネソタ州ダルースで生まれ。御年85歳になっても、多くのステージをこなして、フォーク、ロック界で絶対的な生きる伝説として君臨する存在です。
1962年にコロンビア・レコード(現Sony Music Entertainment)からデヴューし、すでにそのキャリアは60年を超えています。公式に発売されたスタジオ録音のアルバムは40作品、ライブ・アルバムは22作品、ベスト盤などのコンピレーションの類は世界中で数えきれないくらい発売されています。
流出したセッション・テープやライブ録音からなる海賊盤の数はほとんど無限にあって、さすがに頭を痛めたコロンビア・レコードは、著作権延長のための未発表曲集を作ったり、海賊盤音源さえもリマスターして取り込んでしまう「The Bootleg Series」を制作しています。
普通なら海賊盤の音源は「隠し録り」された劣悪な音質のもので聞くに堪えないはずだったんですが、サウンドボードという音響機器から直接出力された公式音源に負けないものが多数あるから困ったものです。
さらに。ボブ・ディランはアルバムに採用しなかった未発表曲が膨大な数になることが知られていて、それらの中に何でアルバムに採用しなかったのか不思議なくらい素晴らしいものが相当数あるので厄介です。つまり、時間的にも量的にも最大深度まで深入りしてみる価値があるということ。
自分の初めてのボブ・ディランとの出会いは、だいぶ古くて1972年にさかのぼります。
自分が初めて世界地図で知った東パキスタンと呼ばれていた土地が、西パキスタン(今のパキスタン)からの独立を求めて紛争が勃発し、後にバングラ・デシュとなる東パキスタンの国民は極度の飢餓にさらされたのです。これに対して、ジョージ・ハリスンとインドの国際的なシタール奏者、ラビ・シャンカールが中心となって1971年にチャリティ・コンサートが開催されました。
この時のライブが翌年にLPレコード3枚組で発売されました。骨と皮だけのこどもの写真をメインにしつらえたジャケットも強いインパクトがあり、豪華な出演者につられて自分も購入したわけです。ただ、1枚目SIDE-Aのシャンカールの長いシタール演奏は、ほぼ最後まで聞いたことが無い。
リンゴ・スターの歌もあんまり真剣になれず、ジョージ・ハリスンとレオン・ラッセル中心に聞いて、いよいよ3枚目のSIDE-Aにボブ・ディランが登場します。初めてのディランは、ハリスンらのごく軽いバッキングはありますが、ほとんど自ら演奏するフォーク・ギター伴奏による歌唱で、今から考えるとその時までの代表曲のオン・パレードでした。
独特の声と歌い方に面くらいながらも、何度か聞いていくうちに癖になってくるから不思議です。その後も新しいアルバムが出ると注目はしましたが、実は他に聞きたい音楽がたくさんあったのでディランまでは懐が回ってきませんでした。
さすがに大人買いもできる年齢になったので、積極的にディランのこれまでの軌跡を埋めていきたいと思うようになりました。知れば知るほど、音楽的にも人間的にも実に興味深く、音楽好きならはまること請け合いです。

