2026年6月12日金曜日

Bringing It All Back Home (1965)


1965年年明けから、ボブ・ディランは5作目のアルバムの準備にとりかかります。自身初のバンドを従えた演奏を披露しますが、一般的には初の「フォーク・ロック」アルバムと評されています。

1月の3日間で十数曲が録音され、11曲が採用され数曲がアルバム収録を見送られました。主としてバンド伴奏がレコードのA面、従来の自信のギターとハーモニカ演奏によるものがB面に配置されました。

当時のディランのファンたちは、多くはフォーク・ギターのアコースティックな響きを期待してレコードに針を落としたはずです。ところがいきなり出てくるエレキギターの音にたまげたことでしょう。

ただし、ここでは取り合えず集めたセッション・ミュージシャンがバックを務めましたが、特に積極的なアレンジがされているわけではなく、あくまでもディランの演奏に合わせたという感じですし、B面がアコースティックなので、従来のファンにも受け入れやすかっただろうと思います。

それこそが1964年の1年間を通して、ディランが周到に準備してきた新しい表現手段が実行され記録された結果でした。この1曲目の「地下のホームシック・ブルース」では、歌詞は意味のある一定の節度を保つことより、脈絡が感じられない若者の文化に出てきそうな単語・文節でたたみかけることを意識しているようです。そして、それが「ロック」であると主張しているかのようです。

「ジョニーは地下室で薬を調合 / 俺は舗道で政府を考える / トレンチコートの男がバッジを見せて首になった言う / 咳こんでいて治すための金を欲しがる」という感じで、何が何だかよくわからない。この曲をバックにディランが文節の一部の単語だけが書かれたフリッブを紙芝居のように、次から次へとめくっていく動画が作られました。

これが、世界で初めて作られた今でいうミュージック・ビデオと言われています。これはアルバム発売後に行われた5月のイギリス・ツアーのドキュメンタリーである「DONT LOOK BACK」に収録されています。意図的に「DON'T」ではなく「DONT」としてあり、またこのタイトルはアルバム2曲目の「She Belongs to Me」の歌詞の中に登場します。

「DONT LOOK BACK」では、当初イギリス・ツアーに帯同していたジョーン・バエズが、ステージに登場することは無く、対外的にもプライベートでも二人の方向性が合わなくなってきたことがわかります。メロディと一体になって意味を成す「歌詞」から、相変わらず詞についてだけの観念的な質問をしてくるメディアに対しても、ディランは苛立って攻撃的になる様子も克明にとらえています。

アルバムは3曲目以降も「Maggie's Farm」、「Love Minus Zero / No Limit」、「Gate of Eden」、「It's Alright, Ma」、「It's All Over Now, Baby Blue」などの後年までライブのレパートリーに登場する有名曲がる目白押しです。

特にB面のアコースティック・サイドのトップを飾るのが名曲「Mr. Tambourine Man」です。架空のタンバリン奏者に、「疲れたけど眠くない俺に1曲聞かせてくれ。そしたら束縛から解放されて、新しい世界に行ける」というような内容で、ディラン本人も含めて当時の様々な人々の心に刺さる内容でした(現代人にも通用しそうです)。


Subterranean Homesick Blues
She Belongs to Me
Maggie's Farm
Love Minus Zero/No Limit
Outlaw Blues
On the Road Again
Bob Dylan's 115th Dream
Mr. Tambourine Man
Gates of Eden
It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)
It's All Over Now, Baby Blue

January 13 ~ 15, NYC

Steve Boone (b), Al Gorgoni (g), Bobby Gregg (ds),
Paul Griffin (p, keyboards), John P. Hammond (g),
Bruce Langhorne (g), Bill Lee (b), Joseph Macho Jr. (b),
Frank Owens (p), Kenny Rankin (g), John Sebastian (b)

☆☆☆☆