2026年6月23日火曜日

John Wesley Harding (1967)


デヴューして5年で、ボブ・ディランは従来のフォーク・ソングから脱皮して、ロック・ミュージックの開祖となりましたが、その根底にあったのはブルースが中心です。またその過程で、従来のフォーク・ファンからのバッシング、難解な歌詞から来るメディアからの質問に辟易し、ディランは謎の多い非常に気難しい男というイメージがつきまといました。

人気が高まるほど、人々は同じことを続ける期待と新しいことに挑戦する変革を求めるようになります。ディラン本人からすれば、その時々に一番やりたいことをやった結果というだけのことなのかもしれませんが、ここまでファンの思惑のはるか上を強行突破して進撃を続けてきたのがボブ・ディランという男だと思います。

1966年7月のバイク事故は、そんなディランに立ち止まって見る余裕を与えたという点で重要です。ファンやメディアの目が届かない田舎に籠って、気心の知れた仲間と気楽に音楽を楽しむ生活を続けたことで、こどもの時に夢中になった音楽などを思い出したのかもしれません。

1967年秋になると、新しいアルバム制作のために重い腰を上げるのですが、春からビッグ・ピンクで密かに行われていたHawksとの「地下室テープ」セッションで生まれた多くの新曲は著作権登録をしただけで封印し、別の新たに新曲を用意しました。

当時のポピュラー音楽界は、ドアーズ、ジェファーソン・エアプレインなどが台頭してきていてヒッピー文化から生まれた幻想的な音作りを看板としたサイケデリック・ロックの人気が高まっていました。

世間に漂うそんな雰囲気とはまったく関係なく我が道を行くのがディランらしいところで、10月17日の最初のスタジオ・セッションに集められたのは、ドラムのケネス・A・バトリー、ペダルスチールギターのピート・ドレイク、そして3作続けて登場するチャーリー・マッコイの3人だけ。しかも、マッコイは本職のギターではなくベースを担当しました。

驚いたことに演奏された新曲は、何とロックではなく、フォークとも言えない、いわゆるカントリー・ミュージックに寄せた内省的なものばかりでした。カントリー・ミュージックはアメリカ南部で始まった白人音楽の原点的なトラディショナルなもので、そこから派生したのがフォークというのが大雑把な理解として間違ってはいないと思います。ディラン自身も十代の頃にははまっていた時期があることを公言しています。

しばらくディランの動向が伝わっていなかったファンにとっては、12月27日に発売された久しぶりのアルバムということで期待したことだと思いますが、大いに肩透かしを食らった格好でした。しかし、シンブルな伴奏だけにボーカルが表に立ち、メロディの良さが際立つ曲が多いので、大変聞きやすいアルバムと言えると思います。

アルバムのトップはアルバムタイトルにもなった「John Wesley Harding」で、19世紀後半の実在した西部のならず者(正しくは「Hardin」)の名前で、貧しい者の味方で、女性を守り、なかなか捕まらなかったと持ち上げています。「All Along the Watchtower」は後々までライブの定番になりましたが、ジミ・ヘンドリックスがカバーしたことで有名になりました。内容は旧約聖書の一説を借りて、堕落した世界で道化師と盗人の二人が自分たちだけはまともに生きていこうと語り合うというもの。

ディランはアルバムの宣伝を極力しないように要請し、アルバムからシングルを出すことも拒否しました。翌年1月に10月3日に亡くなったウディ・ガスリーの追悼コンサートに久しぶりに姿を見せた以外は、公衆に身を晒すことのない生活を続けるのでした。

John Wesley Harding
As I Went Out One Morning
I Dreamed I Saw St. Augustine
All Along the Watchtower
5The Ballad of Frankie Lee and Judas Priest
Drifter's Escape
Dear Landlord
I Am a Lonesome Hobo
I Pity the Poor Immigrant
The Wicked Messenger
Down Along the Cove
I'll Be Your Baby Tonight

Bob Dylan ( aco.g, harmonica, p, vo)
Kenneth A. Buttrey (ds), Pete Drake (pedal steel guitar), Charlie McCoy (b)

October 17, November 6, November 29, 1967 Nashville

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