2016年2月8日月曜日

立ち止まる、振り返る


関節リウマチ診療に本格的に携わって15年、医者になって半分を費やしたことになります。

それ以前は、リウマチの患者さんを診ていなかったわけではありませんが、今から思うとだいぶ幼稚で恥ずかしい診療をしていたんだろうと思います。どちらかというと、救急車で運ばれてくる血だらけの患者さんと格闘していた方が圧倒的に多かった。

ただし、少しだけでかもしれませんが、激変した20世紀と21世紀の関節リウマチ診療の両方を知っていることが強みかもしれません。

21世紀になって、生物学的製剤と呼ばれる画期的な薬の登場により、多くの患者さんがほぼ治ったに近い寛解という状態にコントロールが可能になりましたが、それでも薬の効果が弱い方や、副作用や経済的な理由で生物学的製剤が使えない方も少なくはありません。

そのいう場合には、従来の20世紀型の治療も今でもすることがあります。そこらは、若い先生にはぴんとこない部分だろうと思います。また、整形外科の立場から、どうしても薬だけでは不十分な場合には、装具療法やリハビリテーション、場合によっては手術という手段も用いることができる。

しかし、合併症や副作用の問題で、肺や肝臓、腎臓などの心配をしないといけない場合には、内科系の先生の方が得意であることは否定できません。また、膠原病という範疇で考えると、もともと純粋に内科的疾患であるので、整形外科系の医者は知識と経験は足りているとは言えません。

結局、整形外科系だけでも、内科系だけでも成り立たない部分があるのが関節リウマチ診療であり、一番医者も患者さんも悩むところ。

いずれにしても、21世紀になってからは毎年のように新薬が登場し、新しい検査法が出てきて、それに伴い注意しないいけないこともどんどん増えてきました。

リウマチ専門を掲げる医者としては、もう気が遠くなるような気分で、新しいことをせっせと勉強し続けないと、すぐに置いて行かれる怖さもありました。それでも、やっと落ち着きを取り戻しつつあります。

リウマチ学の停滞という言い方もできますが、もちろん様々な研究をしている方々はいて次の一手になるような話は枚挙にいとまがありません。つまり、今はこれまで、どんどん新しくなっていったことを整理して振り返る時期と言うことができます。

生物学的製剤が登場して10年を超えましたので、使い方のノウハウは当然整理され、より安全に使用することができるようになりました。次は、寛解後をどうするか、あるいはどのタイミングで生物学的製剤を導入するか、その場合何種類もある薬の中から何を選択するのかというようなことが話題になります。

また、今後の課題としてiPS細胞による再生医学がどのように関わってくるか、そして遺伝子医療による予防や治療が可能になるのかというような大きな問題が控えています。

この数年は、リウマチ学の進歩は多少緩やかになるかもしれませんが、その後に必ず再び次から次へと新しいことが登場する時期が来ることは疑いようもありません。

今のうちは、それに備えて、体力をつけさせてもらう時期なんだろうと思っています。小休止している暇はありませんね。今こそ、もう一度全体から勉強しなおすタイミングなのかもしれません。