そこに山があるから・・・
今から一世紀近く前のこと。登山家のジョージ・マロリーは、まだ誰も登頂にしていない世界の最高峰であるエベレストに登ろうとする理由を問われて、こう答えました。
あまりにシンプルな逸話なので、いろいろとアレンジされ、誤訳、誤解なども含めて、広く流布されていて、おそらく聞いたことが無いという人はまずいない。
たくさん言いたいことがあって、とても説明しきれなかったのか、あるいは時間が無くて言いたいことのエッセンスだけを絞り出した結果の言葉なのか。はたまた、あまりにしつこく何度も聞かれる同じ質問で、ちゃんと答えるのが面倒だったのかもしれません。
最近も映画になって話題になりましたし、またテレビのバラエティ企画で女性タレントが登頂に挑戦するなんていうのもありました。タレントは登頂を断念しましたが、いろいろな意味でそれでよかったと思います。
初登頂の栄誉はヒラリー卿(1953年)というのも、よく知られたことです。マロリーがエベレストに挑んだのは、それより30年も前のこと。しかし、三度目の挑戦で帰ってくることはなく、登頂に成功したのかしなかったのかは謎のままになっていました。
そして、1999年についにマロリーの遺体が、8100m地点で発見されたのです。しかし、頂上に立ったのかどうかの決定的な証拠は見つからず、いまだに謎は解決されていません。
登頂とは、頂上に立つと同時に、生きて帰ってきて初めて成功したと言えること。いずれにしても、マロリーはエベレスト登頂に失敗したという事実だけが確定したということなのかもしれません。
その時の話を、有名な登山家のラインホルト・メスナーが著したのが「マロリーは二度死んだ」という本で、 もう10何年か前に読みました。特に山登りをするわけではないのに、この手の冒険譚は大好きで、やはり「男のロマン」とでも言うのでしょうか、ある種の憧れみたいなものがあります。
現実の中で毎日をこなしていると、夢とかからは遠く離れた生活になってしまいますが、何かこういうセリフを言えるようなこともしてみたいという潜在的な望みはどこにあるんでしょうね。
"Why?"、"Because it's there"、なんて、一度はかっこよく口にしてみたいものです。