2021年2月24日水曜日

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 (2009)

これはスウェーデンの映画。スウェーデン語は耳になじみが無く、英語と違って違和感がありますが、慣れるとそれほど気にならなくなります。

この映画については、どうしても原作のことに触れておかないといけない。

原作小説を書いたのは、スウェーデンのジャーナリストのスティーグ・ラーソン。2002年に執筆を開始した初めての小説が「ミレニアム」であり、もともとは10部構成とする予定でした。

第1部が「ドラゴン・タトゥーの女(2005)」、第2部が「火と戯れる女(2006)」、第3部が「眠れる女と狂卓の騎士(2007)」ですが、実はラーソンは2004年に第1部が刊行される直前に心筋梗塞で死去しています。

つまり処女作が絶筆となってしまったわけですが、死後本が出版されるとスウェーデン国内だけでなく海外でもベスト・セラーとなり、多くの賞を受賞しています。

その後ダヴィド・ラーゲルクランツが続編として「蜘蛛の巣を払う女(2015)」、「復讐の炎を吐く女(2017)」、「死すべき女(2019)」を独自の構想から書きあげ、「ミレニアム・シリーズ」の第4~6部として出版されました。

原作は推理小説のジャンルにあたり、その内容は、基本的に犯人捜しのサスペンス・スリラーの形式です。スウェーデンでこれを映画化するにあたっては、(自分は未読ですが)原作にかなり忠実な映像化がされており、「Who done it?(誰がやったか)」という点からも詳しいストーリーを書くことはできません。

とりあえず、このストーリーの背景については説明できる。不正などの告発に物おじしない社会派の雑誌「ミレニアム」の中心人物がミカエル・ブルムクヴィスト。ブルムクヴィストは、著名実業家の不正を記事にしますが、名誉棄損で訴えられ敗訴。半年間の禁固刑に処せられます。

一方、もう一人の主人公がリスベット・サランデル。パンクな服装と、あちこちに付けたピアス、背中にドラゴンの刺青をしています。DVを繰り返す父親に対する殺人未遂により、精神病院などへの入退院を繰り返してきたため、暴力的な無能力者という烙印を押され、弁護士の後見人が付きます。しかし、物事を見極める観察力・記憶力は極めて優秀で、ハッカーとしても一目置かれ、警備会社の調査員の仕事をしています。

ヴァンゲル財閥の長老であるヘンリック・ヴァンゲルは、ブルムクヴィストの身辺調査を行い信頼できる人物と判断し、40年前に殺された可能性がある実の娘のように可愛がっていた姪のヘンリエッタの失踪事件の解明を依頼します。本人は忘れていましたが、ブルムクヴィストは父親がヴァンゲル財閥の仕事をしていた関係で幼い時にヘンリエッタにも会っていたのです。

ブルムクヴィストの身辺調査を行ったのがリスベットで、ブルムクヴィストのパソコンをハッキングして、ヘンリエッタの事件を知り、事件の核心にせまる重要なことに気がついたことから、二人は協力し事件の解明に当たることになります。

事件に関係するのはヴァンゲル家のヘンリックの3人の兄と、その息子・娘たちで、ヘンリックは彼らの中に犯人がいると考えていました。ここで、次から次へとスウェーデンの耳慣れない名前が続々と出てくるのは、少しだけ忍耐が必要です(一族の秘密の因縁は金田一耕助の事件並み)。

この本筋に、リスベットにまつわる暴力を受けてきた過去や、後見人弁護士による性的虐待の話が絡んで、複雑な人間像を織りなしていきます。ですから、単なる推理ドラマではなく、むしろ調査する側の人間心理に深く切り込んでいくので、物語の深みが増しています。

ニールス・アルデン・オプレヴ監督による映像化に当たっては、おそらく多少の整理整頓はされているとは思いますが、くどすぎることもなく、だからといって簡単でもない出来はなかなかのものです。もっとも、そのためにはこの手の映画としては長目の3時間が必要ということ。

北欧の極寒の閉塞感のある雰囲気が画面上に生かされていて、画面の重厚感を増すことに成功していると思いました。ブルムクヴィストを演じたのはミカエル・ニクヴィスト、リスベットはノオミ・ラパスがキャスティングされています。二人とも国際的にも活躍した俳優で、いわゆる美男美女コンビではないところが、映画により現実味を持たせているようです。