最後はスピルバーグの最も得意とするジャンル。近未来SFでアクション物、そしてCGてんこもりで、モーション・キャプシャーで人物が走って、跳んでという物。今どき流行りのVR(仮想現実、Virtual Reality)を取り入れてJ・キャメロンのヒット作を彷彿とさせるアバターが活躍します。
今より四半世紀先の話。天才プログラマーのハリデーが作った「オアシス」と呼ばれるVR空間で、多くの人々が、浮世を忘れて自分のアバターを使って好きなことをして楽しんでいる。ハリデーは、オアシスの中に3つの鍵を隠していて、それを見つけたものはオアシスのすべての権利を得られるイースター・エッグを手にすることができることになっています。
スラムに住むウェイド・ワッツ(タイ・シェリダン)も、そのエッグを求めて多くの時間をオアシスで過ごす一人。彼のアバターはパーシヴァルという呼び名で、オアシス内ではエイチ、ショウ、ダイトウらの友人がいます。ある日、パーシヴァルはアルテミスと呼ばれる凄腕の女性プレイヤーと知り合います。
パーシヴァルは、ハリデーのすべての記録が保管されているハリデー記念館に足しげく通い、ついにヒントを見つけ第1、第2のカギを手に入れます。しかし、ついうっかり現実世界の名前を口にしてしまったことから、オアシスを独占しようとするソレントが率いるIOI社から命を狙われることになる。
アルテミスは現実にはサマンサ(オリヴィア・クック)で、卑劣なIOIを潰すことが目的の集団の一員。第3の鍵のヒントをつかんだIOIは、その場所を封鎖したため、パーシヴァルは全ゲーマーに向かって、我々の自由のために戦おうとメッセージを送ります。
サマンサはIOIに捕らえられますが、何とか脱出してIOI内部からアルテミスとしてパーシヴァルをサポートします。しかし、多くのゲーマーとの全面対決の中、エイチ、トウゴウが倒れ、このままでは本当の命の危険もあるため、パーシヴァルはアルテミスを撃ちオアシスから解放します。
ソレントのアバターと直接対決になり、ソレントはゲーム内すべてを廃墟にする装置を起動し、すべてのゲーマーがオアシスから消滅しますが、何とパーシヴァルはエキストラ・ライフ・コインを持っていて、一人生き残りついに第3のカギを手に入れました。
最後にハリデーが登場し、ゲームは楽しいけれど、美味しい物は現実ではないと食べれないといって、パーシヴァルにイースター・エッグを渡します。パーシヴァル、いやウェイドは仲間たちと共同でオアシスを運営し、休みの日も作り、現実をサマンサと楽しむのでした。
・・・と、まぁ、そんな話に整理できるんですが、このリアルとヴァーチャルとの違いは、本当の俳優の実写演技とCGによるアバターでわかりますが、行ったり来たりが多くて、ちょっとオジサンにはついていくのが辛い所。
評判になったのは、80年代ポップ・カルチャーがてんこ盛りで、オアシス内に登場する見た事があるキャラクターの多さにびっくりします。日本人的には「AKIRA」のカネダ・バイク、ガンダム、メカゴシラなどはその最たるもの。特にダイトウは、甲冑姿の三船敏郎というのも笑える。
キューブリックの映画「シャイニング」が重要なカギになっていて、その場面の再現などは唸ってしまいました。パーシヴァルの愛車は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンで、キング・コングやエイリアンも登場し、バットマンやハーレイ・クインもチラ見せします。
ハリデーは最近のスピルバーグ常連になったマーク・ライランスで、彼の親友でオアシスの共同開発者のオグデンはサイモン・ペッグが演じています。
全般的には高評価のようですが、「やっぱりリアルが一番」みたいなオチは当たり前すぎる。そもそも映画そのものがヴァーチャルなものですし、もう少しひねりが欲しかったところ。
スピルバーグの次回作は、なんと「ウエスト・サイド物語」のリメイク。ミュージカル映画としてベスト10に入るくらい有名な作品を、スピルバーグはどう料理するんでしょうか。コロナ禍の影響で、2020年公開を目指していましたが予定は遅れていてどうなるのかわかっていません。
スピルバーグ作品を全部見たら、スピルバーグが恋愛ものとコメディはダメなのがわかりました。これまで挑戦していなかったものとしては、実はミュージカルがあった。初めてミュージカルに挑戦したのか、あるいは普通の映画にしたのか興味が湧くところですが、ミュージカルなら何も超有名作をわざわざリメイクするというのは、かなり冒険の度合いが高いように思います。
他にもインディ・ジョーンズ・シリーズの新作の企画も進行中。ただし、こちらもさすがに80才近いハリソン・フォードが心配。そもそもスピルバーグ自身も70代なかばですからね・・・
一応、スピルバーグのベストを選び出してみると、月並みな選択ですが、順不同で「インディジョーンズ/失われた聖櫃」、「シンドラーのリスト」、「プライベート・ライアン」、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」、「ペンタゴン・ペーパーズ」あたりを選んでおきたいと思います。「激突」、「ジョーズ」、「未知との遭遇」、「ターミナル」、「ミュンヘン」、「リンカーン」あたりが次点というところ。
スピルバーグが、アメリカン・ニュー・シネマ後のアメリカ映画を牽引してきたことは間違いない事実です。しかも、多彩なジャンルで、多くの傑作・佳作を量産してきたことは、高く評価される。クリント・イーストウッドが90才で新作を準備してるくらいですから、まだまだ我々をたくさん楽しませてもらいたいと思います。