2021年2月22日月曜日

ソーシャル・ネットワーク (2010)

目下のところ、デヴィド・フィンチャーの監督した映画としては、この作品がほぼ最高評価を得ていると言って間違いない。

いまやネットを利用する人々の多くが登録している「facebook」の創業者、マーク・ザッカーバーグを主人公として、サイトの立ち上げから巨大化していく過程を、抱えた2つの訴訟の裁判前聴聞会の様子と絡めてたどっていきます。

facebookについては、自分は登録はしましたがほぼ利用していません。何故かは説明しにくいのですが、何となくSNSに縛られる感じが好きじゃない・・・という感じでしょうか。ですから、最も若くして億万長者になったザッカーバーグ氏に対しては、特別な感慨は持っていません。

最初に思い切って言いますが、世評とは異なりますが、自分はこの映画は好きではない。

この映画で描かれている内容については、本人も積極的には否定していないらしい。映画的なフィクション部分もあるでしょぅが、少なくともこの主人公は自分にとってはすごく嫌な奴です。

主人公が嫌いということは、当然、彼には共感できないし感情移入できない。映画としては、そんな人間を特に持ち上げていないところは良いと思いますが、約2時間見続けるのは苦痛です。

ハーバード大学の成績優秀な学生であるマーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、やたらと早口でまくしたて、女の子にも上から目線でデリカシーのかけらもない。

ある日振られた腹いせに、ブログに彼女を侮辱する内容を書き込み、さらに大学内の寮のサーバーをハッキングして女学生の個人情報を盗み出します。この情報をもとに、女子学生の人気投票サイトを立ち上げて、学校内に一気に知られるようになりますが、同時にサイテーの奴としても名が売れる。

ボード部で人気があった双子のウィンクルボス兄弟から、大学内社交サイトの立ち上げに協力してくれといわれたマークは、彼らには協力するそぶりは見せましたが、自分で親友のエドゥアルドに資金協力してもらい独自のSNSを立ち上げてしまいました。

立ち上げたSNS、つまりfacebookは瞬く間に大学内に広まり、他大学にも広げていきます。音楽をやり取りできるNapsterを立ち上げたショーン・パーカーは、マークと接触し事業拡大を援助しますが、エドゥアルドを強引に排除してしまいます。

このことから、ウィンクルボス兄弟からアイデア盗用、エドゥアルドから共同創業者としての地位保全の訴訟を起こされることになるのです。弁護士から、「今のあなたならスピード違反の罰金みたいなものだから和解する」ように勧められます。

過去と現在が行ったり来たりする構成ですが、その間は数年しかたっていないので、最初のうちはどっちがどっちなのか戸惑います。いずれにせよ、どっちも嫌な奴なのは変わらない。最後に女性弁護士に「あなたは嫌な奴じゃない。そう振る舞っているだけ」と言わせて、何とか好感度を上げで締めくくろうとしている。

いやいや、そうじゃないでしょう。2時間見てきて、嫌な奴は変わらない。この主人公は、金のためでもなく、女のためでもなく、自分の知的好奇心のために親友も彼女も切り捨てていく人物です。いわゆる、大人の対応ができないこどもみたいなものということでしょうか。

マークの行動論理はものすごく強い主観で決まり、そういう人物を扱えるのはさらに強烈な主観を持ったショーンのような者だけということ。もっとも、そういう人たちだから大成功するか大失敗するというのもあるかもしれません。

フィンチャーが、そこを描きたいと思ったのならまずまずというところ。殺人などの犯罪に関わるストーリーではありませんが、次第に組織が大きくなっていく過程はある意味サスペンスです。そのあたりの描き方は、さすがという感じ。

なお、冒頭、彼女と口喧嘩して振られるシーンはなんと99テイク撮ったらしい。彼女であるエリカを演じるのはルーニー・マーラーで、次のフィンチャーの映画では主役に抜擢されました。