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2021年2月28日日曜日

ドラゴン・タトゥーの女 (2011)

デヴィド・フィンチャー監督の久しぶりのクライム・サスペンスは、スウェーデンの作家、スティーグ・ラーソンの処女作であり、同時に絶筆になった「ミレニアム・シリーズ」の第一弾の映画化。とは言っても、2009年に本家スウェーデンですでに映画化されているので、ハリウッド版リメイクという位置づけ。

ここで大きな問題は、どっちを先に見るかということ。単体の映画としての完成度から言えば、ハリウッド版に軍配が上がりそうなんですが、原作をしっかりと映像化したという点ではスウェーデン版もあなどれない。

そもそも、2時間40分のハリウッド版は第1部にあたる「ドラゴン・タトゥーの女」のみ。一方のスウェーデン版は、それに続く第2部、第3部も連続的に制作し、全9時間で「ミレニアム」の全貌を描いている。

第1部については、ハリエット・ヴァンゲル失踪事件の解明を、ミカエル・ブルムクヴィストが依頼され、過去の連続殺人事件を含めて天才ハッカーのリスベット・サランデルと共に解明していくというストーリーはほぼ同じ。原作に忠実と評判のスウェーデン版と比べても、ハリウッド版の変更点は多くは無いし、少なくとも骨子となる展開は変更されていません。

好き嫌いは個人の好みですから、どっちでもいいと言えばそれまでですが、第1部だけで見たとしても、主役の一人リスベット・サランデルの人間としての描き方はスウェーデン版の勝利と考えます。

リスベットには驚愕の過去があるわけですが、第1部はそれについてはあくまでも序章にすぎません。それでも、スウェーデン版では、この本筋と関係ないストーリーがどうなっていくのか強い興味を持たせる作りになっていました。これは、続けて第2部・第3部を作ることが決まっていたことも関係あるのでしょうが、ハリウッド版ではこのサイド・ストーリーが浮いてしまっている感じは否めない。

特にリスベットは天才ハッカーのはずなのに、ハリウッド版ではアナログな調査が多い。コンピュータを駆使して、ネットワークへの侵入から情報を取り込んでいく過程は、スウェーデン版の方が圧倒的によく描かれています。またブルムクヴィストの雑誌ミレニアムそのものについての情報も、ハリウッド版では省かれています。

スウェーデン版は、ブルムクヴィストはミカエル・ニクヴィスト、リスベットはノオミ・ラパスが演じ、ちょっとはいけてる中年記者と小柄で少年のような人との交流が下手な女子という感じ。

ハリウッド版では、ブルムクヴィストは、「007」のダニエル・クレイグ。はっきり言ってイケメンの中年の星です。リスベットを演じるのは、フィンチャー監督前作で登場したルーニー・マーラ。こちらは、前作と打って変わってパンクな姿は驚き物ですが、基本のカワイ子ちゃんは隠せない。

一般的な世評としては、ハリウッド版は悪くはありません。マーラのエキセントリックなリスベットも評判が良い。ですから、原作を読んでいない人、あるいはスウェーデン版を見ていない人は、ハリウッド版からみる方が良いかもしれません。

ただし、「ミレニアム」という連作として重要な部分がハリウッド版では、中途半端に登場するので、そこの部分は冗長な印象は持ってしまうかもしれません。探偵ブルムクヴィストとワトソン役リスベットに割り切って、ハリエット事件だけに集中して2時間の映画にした方がすっきりしたかもしれません。

ハリウッド版は、久しぶりにタイトルはフィンチャー節が炸裂してかっこいい。Led Zeppelinの「移民の歌」のカバーに乗って、ドラゴンとハッカーをイメージしたCGがうねるように描かれているのはMVを見ているようで素晴らしい。

また、本編の映像も実にスタイリッシュ。アクション・シーンはありませんが、クレイグのブルムクヴィストもありだと思わせますし、マーラのリスベットも魅力的であることには違いありません。調査を依頼するヴァンゲル家のヘンリックは、つい先頃亡くなったクリストファー・プラマーです。

自分のようにいろいろ悩んで、スウェーデン版を先に見ちゃった人は、残念ながらあくまでも「リメイク」であって、オリジナルを超えるほどではないという感想になってしまうのはお許しいただくしかありません。