スウェーデン版「ミレニアム」の映像化シリーズは、第1部は劇場公開用映画として、さらに第2部と第3部は続けてテレビ映画として連続で制作されました。第2部と第3部は、ダニエル・アルフレッドソンが監督し、主要キャストは同じです。
第2部と第3部は内容も連続しており、第1部の謎解きとは一転して、リスベットを巡る公安警察の中の特殊組織による30年近い陰謀を暴くという大がかりなサスペンスになっています。
第1部で、リスベットの後見人となったビュルマン弁護士から性的強要をされたエピソードは、第1部の中では本筋とは無関係で、リスベットの人間性を理解するサイド・ストーリーという感じだったのですが、実はこれが「ミレニアム」最大のスリルの序章でした。
30年近く前に、ソビエトの諜報員だったアレクサンデル・ザラチェンコは、スウェーデンに亡命。結婚しリスベットが生まれますが、リスベットの母親は度重なるDVのため脳に損傷をうけます。12才だったリスベットは、帰り際のザラチェンコにガソリンをかけて焼き殺そうとしますが未遂に終わり、児童精神病院に収容されました。
ここで、精神科医師のテレポリアンにより虐待され、長期の拘束を受け「重度の精神疾患」により責任能力が無いと烙印を押されます。パルムグレン弁護士が後見人を引き受け、社会に戻ったリスベットは、パルムグレンとは信頼関係を築き、警備会社の調査員として働くようになったのです。
一命をとりとめたザラチェンコは、秘密裏に結成された公安警察の中の特務機関により守られ、増長してあらゆる悪事に手を染めるようになっていました。パルムグレンが脳梗塞で倒れたため、リスベットを監視・コントロールするために新しい後見人として特務機関が送り込んだのがビュルマンでした。
そんな時、ザラチェンコらが行っていた人身売買による売春行為を、フリーのジャーナリストのダグが嗅ぎ付け雑誌「ミレニアム」に売り込んできました。ミレニアムでは、その買春した客らに政府関係者も含まれていたことから、記事にすることを承認します。
しかし、ダグと一緒に調査していたミアの二人は、深入りし過ぎてザラチェンコらに殺されてしまいます。また買春した要人が特務機関の人間だったことから、調査を継続するブルムクヴィストらにもしだいに危険が迫ってくるのでした。
第2部「火と戯れる女」では、リスベットはダグらの殺人容疑で警察から追われ、そして間隙を突いてザラチェンコにたどり着き瀕死の重傷を負うところまで。そして第3部「 眠れる狂卓の騎士」では、病室から携帯だけでブルムクヴィストの捜査に協力し後半は裁判で真実を明らかにしていく様子が描かれます。
第1部から全部通して見ると、普通のテレビドラマ1クール分なので、けっこう大変なのです。しかし、脚本が良いのか、ストーリーの展開のスピードが落ちることなく、リスベットの動きは地味な感じですが飽きさせません。
やはり、もともと続き物の構想で書かれた原作なので、話の作り込みがうまく出来ている。第1部「ドラゴン・タトゥーの女」は、リスベットとブルムクヴィストの紹介編みたいな位置づけで、おそらく原作者が一番力を入れたのは第2部~第3部の巨悪との因縁・対決なのだと思います。
全体を通して、人権を重んじる北欧国らしい、男尊女卑に対する痛烈な批判精神が貫かれています。リスベットも社会からの落後者ではなく、社会から押し潰された被害者として描かれている。それでも裁判では、リスベットはモヒカンにしてパンクないで立ちで登場し、自己主張をすることで単なる弱者ではなく立ち向かう勇気があることを示しているように思いました。
現在は日本語版としては、最初に出た劇場用のそれぞれ2時間半程度のものと、のちにテレビ用に追加編集してそれぞれが3時間になった「完全版」のものがDVDだけで登場しました。ブルーレイは英語字幕付きの海外版しかありません。
どうせ見るなら完全版をお勧めしますが、現在では高価な中古しか手に入りません。しかし、三作をまとめて見るだけの価値は十分にあります。リスベットの強烈なキャラクターは、十分に中毒性があると言えそうです。
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