2021年6月14日月曜日

天地創造 (1966)

巨匠ジョン・ヒューストン監督による大作であり労作となる、ほぼ3時間の映画。原題は「The Bible」であり、ずばり「聖書」です。聖書には「旧約」と「新約」がありますが、単に聖書と言えば旧約聖書のこと。旧約(古い神との契約)は、ユダヤ教とキリスト教の正典。キリスト教徒ではない自分が、それ以上のことを解説することは無理な相談というもの。

この映画は、この中に登場する主なエピソードを、オムニバスのようにつないだもので、製作は当時ハリウッドで絶大な力を持っていたディノ・デ・ラウレンティス。日本人的に注目するのは音楽。何と黛敏郎が大抜擢されて担当し、壮大なスコアを書きました。

さて、原作は何しろ膨大な量の話が詰まっているので、映画化したのは最初の「創世記」の部分だけ。それでも相当なボリュームですから、主として前半は「ノアの箱舟」、後半は「アブラハムとイサク」の話が中心で、他はかなり簡潔に描かれています。

まずは、神が6日間で何もないところから空、地、水などを作り、植物・動物、そして人間を生み出し、7日目に休憩したという話。最初の人間は、もちろんアダムとイブで、神に善悪がわかるようになるから食べてはいけないといわれていた木の実を食べてしまい、エデンの園を追い出されるという話。


エデンを追放されたアダムとイブは、カインとアベルとの二人の息子を授かります。アベルの供物だけを神が受けたことに腹を立てたカインはアベルを殺してしまい、カインの厄災をもたらす子孫が増えていき、神はすべての生き物をリセットする決断をします。

そこで神は、アダムとイブの間に生まれた三男、セトの子孫であるノアに巨大な船を作り家族と、すべての動物のつがいを乗せるように命じます。ちなみに、ノアは監督ヒューストン自ら演じている。船が完成し、動物たちを乗せ終わると雷鳴と共に雨が降り始め、大洪水になり地上のすべてを水が覆ってしまいました。40日間の豪雨の後、箱舟はアララト山(現トルコ)に漂着し、ノアたちは新たな地に生活を始めるのでした。

ノアの子孫、ニムロドは暴君になり、神に手が届きそうなくらい高い塔を作ります。これがバベルの塔と呼ばれるもので、ニムロドは最上階から天に向かって矢を放つという暴挙に出ます。怒った神は、人々がそれぞれ違う言葉を話すようにしてしまい、混乱した民衆は世界中に散り散りになっていきました。

さらに時は流れ、神はアブラハムに示すカナンの地に行けば、見渡す限りの土地を治めることができると告げます。アブラハムを演じるのは「パットン大戦車軍団」のジョージ・C・スコット。これが今のイスラエルの建国の基本にある「約束の地」という考え方です。アブラハムは妻サラ(エヴァ・ガードナー)を愛していましたが、二人の間にはこどもがいない。一緒に旅をした甥のロトはアブラハムと別れソドムの町に向かいます。


年老いたアブラハムの前に神の死者(ピーター・オトゥール)が現れ、これからソドムを滅ぼすと教えます。そして、それが終わるとアブラハムにこともが授かると言い残しました。神の使いはロトに家族と共に立ち去れと言い、退廃したソドムの町は業火により壊滅します。そしてサラはイサクを出産するのでした。

神は、再びアブラハムに告げます。何と、少年になったイサクを神への生贄にしろと言うのです。苦悩するアブラハムは神は絶対であるとし、イサクを生贄にしようとしますが、ぎりぎりのところで、神は「神に対する信仰心が間違いないか試すための試練だった」と告げ、アブラハムを祝福したのです。映画はここまで。創世記は、この後イサクの息子ヤコブまでが書かれています。

聖書をまともに読んだことが無い自分としては、手っ取り早く有名なエピソードを知ることができたのでよしとしますが、映画としては題材が題材ですから、必ずしも名作とは言い難いかもしれません。地味な展開で、起承転結で言うと起承の連続という感じで、転結がありません。

聖書の内容を勝手に改変するわけにもいかないでしょぅから、そこはいかにジョン・ヒューストンと言えどやむを得ない。逆に知識として、この最低限の3時間で聖書のあらすじを学べることに映画の意義があると思います。