2021年6月21日月曜日

告発の行方 (1988)

ジョディ・フォスターと言えば、子役から芸能界にいたのですが、最初に世界中から注目されたのは13歳の時に出演した「タクシー・ドライバー(1976)」での12歳の娼婦役でした。当時は、テータム・オニールとハリウッドの子役の人気を二分したものです。

その後も子役としてある程度の活躍はしましたが、大人の女優としてあらためて世間が認識したのがこの作品。タイトルで真っ先に登場するケリー・マクギリスを差し置いて、アカデミー主演女優賞を受賞しました。監督はジョナサン・カプランで、後に人気TVシリーズ「ER緊急救命室」を手掛けています。

飲酒やマリファナに親しみ、軽い女とみられるサラ・トバイアス(ジョディ・フォスター)は、酒場で3人の男にレイプされます。この事件を担当するのは女性検事のキャサリン・マーフィー(ケリー・マクギリス)で、サラの素行の悪さから強姦罪での立件が厳しいため、弁護士と取引し刑が軽くなる暴行罪で決着させます。

レイプのことがまったく無関係に扱われた判決にサラはショックを受け、キャサリンを責めます。レイプ現場では、大勢が周りではやし立てており、その中の一人がからかってきたことに逆上したサラは、自分の車をその男の車にぶつけてしまうのです。

キャサリンは、周囲で観て見ぬふりどころか、むしろそそのかした連中に対して強姦教唆の罪で告訴することで、サラがレイプされたことをあらためて裁判の中で立証することを決意します。本気で自分の味方になろうとしていることを理解したサラは、しだいにキャサリンに対して心を開くようになりました。

後半1/3は、教唆罪に対する裁判シーンが中心。裁判では、サラは涙を流して当夜の状況を説明します。キャサリンは事件を警察に通報した目撃者を見つけ出し証言をえました。弁護側は、誰がどんなことを言ってレイプをそそのかしたことは証明できないと論告しますが、陪審員の評決は有罪でした。サラとキャサリンは、単なる暴行事件ではなくレイプであったことを証明したのです。

強姦という犯罪は、被害者側が泣き寝入りしやすく、また告発しても立証することが困難です。勇気を持って裁判に立ち向かっても、時には被害者は人間性を否定されるような質問をされたりする。この映画では、被害者にとって最っも苦しい立場を想定した中で、何とか事件を立証しました。

大人のしっかりとした女性として登場するケリー・マクギリスの、ある意味常識的な対応もわかるし、また、その演技も落ち着いています。しかし、サラを信じサラの一番望んでいる事件をうやむやにしたくないという気持ちを理解してからは、少しずつそこに「熱いもの」が混ざってくる感じ。

ジョディ・フォスターは、「タクシー・ドライバー」の時のような社会の底辺でもがく女の子で、確かに生活は乱れている。しかし、逆にキャサリンに心を開くようになり、しだいに大人の女性として精神的に自立していくところは、ジョディの演技力の賜物というところです。