レントゲン写真で思い出すことはいろいろあって、実は学生の頃からレントゲン写真を見るのが大好きでした。これは今でもそうなんですが、目に見えるものは理解しやすいのですが、見えないものは容易には信じられない・・・ということに関係しているわけです。
これはいわゆる唯物論とは違うのでして、とにかくレントゲン写真には嘘が無いということなんですが、う~ん、うまく説明できません。
学生のときに唯一読了した英語の本がありました。それはDr.FelsonのChest Roentgenographyという有名な胸部レントゲン写真の基本的な解説書でした。これはレントゲンの基本的な理屈を説いた初心者向けのテキストでした。
とにかく、そんなわけで卒業前には本気で放射線科に入局しようかと思っていたこともありました。まあ、縁があって整形外科の門を叩いてしまったのですが、それからも画像診断については是非勉強がしたくて、研修医のときに特にお願いして放射線科をローテーションさせてもらったのです。
整形外科から研修医がくるのは初めてのことだったらしく、たぶんその後も自分の知る限りはいませんでした。さて、自分が放射線科に回ったのは、一番研修医が少なくなる3月から5月だったと思います。普通なら多くの研修医がいて楽勝の放射線科のローテーションですが、この時期だけは大変。
おかげで、多くのことをやらせてもらえて、自分としてはとても楽しかったわけです。まず午前中は胃の造影検査をします。今では古典的とも言える二重造影という方法で、慣れると5分くらいで一通りを撮影できるようになりました。これを10人くらいこなして、余った時間は大腸の造影検査。
午後からは血管造影検査があるとその手伝い。無いとひたすらいろいろな画像のレポート作成をします。時々リンパ管造影というようなマニアックな検査をやったり、とにかく暇な時間はほとんどありませんでした。
当時の放射線科の講師の先生が、お前は整形外科なので骨の単純写真のレポートも書けといわれ、大量の写真が自分のところに回ってきました。さらにMRI検査が導入される直前のことで、いきなり英語の解説書を渡され、他の研修医との勉強会用に訳して来いといわれて四苦八苦。
夜は消化器外科や内科のカンファレンスに放射線科として参加して、偉い先生方のやり取りをひたすら黙って聞いているわけです。やっと開放されて、整形外科の医局に遊びに行くと、「お前の書いたレポートがついていたが、間違いだらけだ」と先輩に怒られる。
でも、そういうことすべてが今の自分の肥やしになっているわけで、もう一度研修医からやり直すなんてことは勘弁してもらいたいと思いますが、放射線科だけならもう一回やってみたいと思ったりもします。