ベートーヴェンのピアノ・ソナタ(通はベトソナと呼ぶらしい)渉猟の旅はずっと続いているのですが、こればかりはLPレコードの時代だったら到底難しい。なぜなら、経済的に厳しいということです。
クラシックのレコード盤はだいたい1枚2000円から2500円、廉価版で1000円からという値段でした。すると、全32曲、およそ8時間分くらいになる全曲の入ったセットは最低でも12枚組みということになります。
普通に考えると、3万円以上するようなセットをおいそれと買うわけにはいきません。ところが今はCDで多くても10枚以内、しかも3000円程度から6000円くらいで手に入る。新譜であっても1万円程度ですから、まぁ大人買いができないくない程度。
おかげで、ずいぶんとそろってきましたよ。ケンブの60年代、アラウは60年代と80年代の2種類、このあたりが自分にとってはスタートであり基本となる音源。バックハウスは新盤ですが、一般には最も評価が高いが、どうも自分はあまり好きではありません。
歴史的にはシュナーベルですが、30年代ですが意外と音がいいけどやはり「歴史」でしょうか。アシュケナージ、バレンボイム、グルダ、ブレンデル、グールド、ギレリスという20世紀を代表する方々。女流ではアニー・フツシャー、マリア・グリンベル、タチアナ・ニコラーエワ。
今はベテランというところでは、グード、リル、コバセヴィッチ、プルーデルマッハー。ハイドシェイクはただいま注文中。現役若手どころではポール・ルイス、イリーナ・メジューエワ。
そして、すでに廃盤となり手に入らなくなって、ますます聞きたくなっていたのがこの横山幸雄だったのです。最近盲目の辻井君の師匠として注目されましたが、最近はショパンの全曲目を1日でいっきに聞かせるというギネス記録も樹立するなど、日本の現役ピアニストの中ではなかなか精力的な活動をする中堅どころとして貴重な存在。
1999年に連続演奏会を行いライブレコーディングされたものですが、当初からソニーの限定発売であっというまに廃盤になっていました。同レーベルのベートーヴェン全集の中に半分くらいの音源がはいっていますが、なんで全部いれてくれないのと嘆くことしかりであったのです。
今回は久しぶりにYahooのオークションのお世話になりました。もともと国内版で定価は2万円くらいだったものですが、中古で15000円。それでも安くはありません。しかし、なにしろ大変に評価が高い。
ひさしぶりに勇気をもってポチっとしてしまったというわけです・・・が、期待をうらぎりません。とにかく感覚が若い。勢いがある。力任せ的な弾き方という人もいるかもしれませんが、作曲者の年齢を考えると、初期のソナタは若いベートーヴェンの感性を代弁しているかのようです。
後期のソナタは、やたらと難しくとらえる演奏もありますが、横山は勢いを落とすことはなく、そこに円熟の味わいを追加してきたという感じでしょうか。なかなか聞き応えのある演奏です。さすがに世評が高いだけのことはある。
さらにすごいのは、このセットでは作品番号付きの曲も網羅しているというところ。WoO番号の「エリーゼ」はありませんが、ひととおりベートーヴェンのピアノ曲を楽しめるというのもポイントが高い。
いゃ~、さすがに奥が深い領域なので、こういう名演奏を探しているときりがありませんな。