2011年3月20日日曜日

放射線量

福島原発では関係者の決死の3号機への放水作業で、一時的には放射線量が減少したのも束の間、本日は4号機への放水が続きました。さらに原子炉内の圧力の不安定さも手伝って、なかなか先が見えない状況が続いています。

しかし、外部電源の引き込み作業がだいぶ進んでいるとのことで、なんとか操作パネルが復旧すれば、事態は収束しやすくなると期待されています。

一方、今日9日ぶりに救助された祖母とお孫さんがいました。特に祖母は80歳という高齢ですから、本当に奇跡的なことだといえます。地震だけなら、他にも生存者が次から次へと救助されたでしょうが、津波の驚異はすさまじくなかなかこのような嬉しいニュースは入ってきません。

ところで、放射線の見えない驚異というのは、依然として続いているわけです。これについては、いろいろな人がいろいろなことを言ったり書いたりしているわけで、なかなか理解の混乱がおさまりそうにありません。

もちろん、自分も原子力・放射線の専門家ではありません。あまり、不確かなことを言うと、そういう混乱の原因の一つになってしまっては申し訳ない。

ただ、ふだんレントゲンというγ線の放射線を使っている、別の言い方をすると患者さんに放射線を浴びせている立場としては、ある程度冷静な対応をすべきだと思っています。

日本人は広島・長崎に落とされた原子爆弾のイメージを捨てることができないため、原子力に対していつでも「キノコ雲」を重ねて想像してしまいます。今回の事故でも、そのことがよけいに人々の恐怖心をあおっている部分は否定できません。

原子爆弾というのは、原子力を利用していますが、原子力発電所には存在しないようないろいろな化合物を利用して、まったく別の次元で引き起こされるものです。

ですから、今回の事故で心配しなければならないのは漏れ出た放射線による健康被害と土地の汚染という問題であって、これについては政府が指示している避難範囲がすべてといっていいのだと思います。

つまり、最悪の事態が起こった場合、福島第一原子力発電所から半径20km圏内からの避難と半径30km圏内の屋内待避ということです。仮に範囲が甘いとしても、アメリカがいっている半径80kmで十分と言えるのでしょう。

信号で言えば、半径20km圏内は赤、半径20~30km圏内は黄色、半径30~80km圏内は点滅している黄色、それ以外は緑ということだと思います。

この中に含まれている方は、当然しっかりと最悪の事態に備えて可能な限りの避難をすることは当然のことです。しかし、東京や神奈川で、必要以上にあわてる必要はありません。とにかく、冷静に行動することが求められています。首相官邸のHPでも、安全についての情報を積極的に載せています。

現場で直接の作業に従事したハイパーレスキュー隊の方々の被曝量は、最大で27ミリシーベルトだったそうです。胸部単純レントゲン写真の被曝量はおおよそ1回につき0.1ミリシーベルトですから、270回分を数時間の中で被爆したと考えるとかなりの量に思えてしまいます。

しかし、CT検査では1回の検査で5~10ミリシーベルトのの被曝と考えると、CT検査数回分であり、これは日常的な診療の中で多くの患者さんに行われている範囲といえそうです。ただし、どれだけの時間連続的に被爆するかで、状況は変わってきますからなかなか単純には割り切れるものではありません。

一般的には、健康被害が確認されているのは100ミリシーベト以上の被曝からです。少なくとも生死に関わるような被曝は数千ミリシーベルト以上と言われています。隊員の方々も、4時間以上の連続作業をすれば体調不良を訴えるかもしれません。

都内の1時間当たりの放射線量は、震災前はだいたい0.03~0.04マイクロシーベルト(0.00003~0.00004ミリシーベルト)です。震災後では最も高かったのが3/16の0.161マイクロシーベルト(0.000161ミリシーベルト)です。

今までの状況の中では、最大の状態を1年間継続したとすると、
0.161マイクロシーベルト×24時間×365日=1.41ミリシーベルトということになります。

こういう数字はあげていたらきりがありません。とにかく、それをどう捉えるかは個人個人で違うと思いますが、少なくとも東京・神奈川近辺では今すぐ危険と言うことはないし、最悪の状態でも安全と考えます。