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2011年11月20日日曜日

Haydn Trio Eisenstadt / Beethoven Piano Trios

アンサンブルというのは、元々フランス語の「一緒に」というところから、音楽では合奏のことをさすわけです。まぁ、そんなことは今更書くほどのことではありませんが、演奏する側も一緒に音楽を奏でていくのは楽しいでしょうし、聴く側も独奏と違った楽しみ方があるものです。

一人ではsolo、二人だとduo、三人はtrio、四人だとquartet。このあたりまではけっこうありますが、さらに増えてquintet、sextet、septet、octetくらいまではぽつぽつ見かけますが、それ以上になってくるとさすがにジャズならビッグバンド、クラシックならオーケストラという呼び方の方が相応しい。

クラシックではアンサンブルのユニットの楽器編成はいろいろありますが、ピアノとヴァイオリンとチェロの3つが基本になっていることが多い。特にピアノは一台でソロも伴奏も可能で、ある意味オーケストラに匹敵する働きをします。

弦楽器や木管楽器は、少なくとも2本以上揃わないと伴奏にはなりませんから、どちらかというと独奏楽器です。ですから一般的には、ピアノの伴奏と合わせてというのが合奏の基本パターン。ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、クラリネット・ソナタなどはいずれもピアノがついているわけで、なかには独奏楽器とピアノの駆け引きを楽しむ事ができます。

ピアノとヴァイオリンにもう一つチェロが加わると、音の広がりが格段と大きくなって違った面白さが出てくるのです。チェロが低音部を補強するため、全体に音に厚みが増してくる。独奏中心だったヴァイオリンがチェロ共に伴奏を受け持つようになり、よりピアノの活躍の場が増えてくるわけです。

ですから、クラシックの世界では弦楽四重奏団とともに常設のピアノ三重奏団というのもけっこう存在している。ボロディン・トリオ、ボザール・トリオ、スーク・トリオなどは特に有名ではないでしょうか。常設でなくても、編成が小さいので有名な独奏者同士が集まったスーパートリオもスポット的に数多く存在します。

いつものように自分は天の邪鬼で、そういう有名どころとは別に、比較的新しいグループで録音の音も上質なものに目を付けてしまいます。そこで注目しているのが、1992年結成のHaydn Trio Eisenstadtと1996年結成のFlorestan Trioの二つのグループ。

どちらも有名なスターがいるわけではありませんが、十分すぎる経験と実力を備えた奏者が揃っています。何より、常設トリオの強みは息のあった「完璧なアンサンブル」です。その分一人一人の個性は、グループの中に埋没しがちになりますが、その分音楽の完成度は素晴らしい。

ベートーヴェンのピアノ三重奏曲は11曲あり、特に第7番「大公」はこのジャンルの最も知られた曲となっています。三人の刺激し合うスリリングな演奏ならば、ケンプ+シェリング+フルニエというスーパースターの名盤がありますが、あえてこのHaydn Trio Eisenstadtのセットを推薦したい。

この全集は2007年に録音され、当然音質については問題なし。各楽器のバランスも文句の付けようがありません。何より全体を通しての統一感は、全集として聴く上で大変重要です。しっかりとしたテクニックは間違いなく、三人全体で音楽を作り上げていく共同作業で見事なアンサンブルを聴かせてくれます。

Florestan Trioのベートーヴェンも、同じように素晴らしいです、しかしHaydn Trio Eisenstadtの方が、やや攻めていく姿勢が出ているように感じ、より自分たちのレパートリーとして完成度が高いように思います。

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