2012年9月27日木曜日

病院のかかり方

病院と診療所の違いは、昔はほとんど違いはありませんでした。入院するためのベッドかあるか、どうかという一点だけです。もっとも、この違いがすごく大きいわけですが。

法律上は、診療所でも、一定数までのベッドを持つことができ、それを有床診療所と呼びます。ただし、この数はわずかで、大多数の診療所は無床診療所なのです。

もともと、診療報酬という仕組みでは病院もどんどん患者さんを受け入れて行かないと、単純に収益になりませんでしたから、とにかく患者さんを多く集めることが大事でした。

以前は、患者さんは病院でも診療所でも好きなほうに行きます。一般的には、病院のほうが入院できるわけですから、扱える病気の範囲が広がります。しかし、組織が大きいだけに、一回の受診に時間が多くかかり、場合によっては1日がかりということも珍しくありません。

医者については、診療所はベテランが多いのですが、通常医者は一人しかいないので、その医者の考え方がすべてを決定します。病院、それも大学病院では研修医という、はっきり言ってまだ右も左もわからない若い医者が主として担当医になることが多い。

診療所で手に負えないような患者さんは、大きな病院に紹介して、より詳しい検査をしたり、あるいは入院していないとできない・・・例えば、全身麻酔による手術などを行うというのが普通の流れ。

大病院では、診療所と同じような通常の外来診療もあるので、どうしても仕事量が多くなって行きます。ただし、病院の医師は経営的な部分については、ほとんど気にかける必要はありません。

その点は開業医は、診療所経営の実務・労務までをすべてこなさないといけないので、実際開業医になってみると、すべての仕事量については勤務医のほうが楽でした。もっとも、自分で希望して開業したんでしょうと言われてしまえばそれまでですが。

しかし、今は勤務医の「激務」を軽減することが叫ばれ、病院と診療所の機能分化が進められました。もっともすでに開業して古参の医者としては、そういう「激務」をこなして医者として成長してきたという思いがあるんですけどね。

最近は、多くの大病院が紹介状無しの患者さんを原則お断りするようになってきました。法律では医者は患者さんの求めがあれば、診療を拒否することはできません。


しかし、診療所でも問題ない患者が病院に行って、勤務医の負担を増やすことを避けるために、紹介状無しの患者さんについては初診料に高額の自費の上乗せが可能になっています。

その他にも、この10年くらい診療報酬制度の中で、意図的に分化を促進する仕組みが増えてきているわけです。

例えば、関節リウマチという病気では、原則として外来診療だけで、診断・治療が完結する病気です。ですから、女子医科大学のリウマチセンターも形態は診療所、病院ではありません。

ですから、大変進歩が激しく現代医学の先端を行くような薬を使うにもかかわらず、自分のような開業医でもリウマチ専門医として認知されることが可能になります。

ただし、数少ない頻度で、何らかの合併症や薬の副作用の問題が出た場合、あるいは以前より激減したものの手術が必要な時には、入院しての治療が必要になります。

ですから、自分たちリウマチ医と呼ばれる医者は病診連携を重視するわけです。病院の医師も、安定して患者さんをある程度、診療所などに任せて、より重大な問題を抱えている患者さんにかける時間を増やしたいと考えています。

今後は、それぞれの長所を生かした役割分担がさらに整備されて行くことでしょう。また、それをうまく利用することを周知徹底して、患者さん側の意識を変えて行くことも重要になっています。