昨年、11月28日に、実は日本の関節リウマチ診療に大きく関係したものが発売になりました。それはバイオシミラーと呼ばれる薬です。
関節リウマチ治療に革命的な変化を起こした、インフリキシマブ(レミケード、田辺三菱製薬)が発売されたのは2003年のことです。これは抗体製剤といわれ、一般に生物学的製剤、略してバイオなどと呼ばれてきました。
バイオシミラーとは、バイオ製剤と似たものという意味ですが、いわゆる医薬品のジェネリックと同じ概念のものになります。だだし、ジェネリックと決定的に異なるのは、バイオシミラーは新薬と同じ扱いを受けていることです。
ジェネリックは、価格が安いために医療費抑制に効果的であるとされ、厚生労働省は数年前から積極的にジェネリックを使う方向性に導こうとしています。一般的にジェネリックは、オリジナルの60%の価格設定となります。
しかし、ジェネリック品は、薬の化学的な薬効成分が同等というだけで、実際に同じだけの効果があるのか、副作用も同等なのかといった点の発売前調査は行われていません。また発売後の調査も特別なものはなく、製薬会社による情報活動もほぼゼロといっていいでしょう。
ですからローコストで提供できるわけですが、実際ジェネリックは昔から存在していて、中にはまったく効果がないような粗悪品も、医者であれば数多く経験します。
バイオ製剤は分子量が大きく、さすがに薬効成分が同等ならそのまま発売というわけにはいきません。そこで、バイオシミラーは新約と同じように治験と呼ばれる臨床研究が行われ、しっかりと主作用・副作用が検証された上で発売にこぎつけるのです。価格は70%(~80%)に設定されます。
さて、今回発売になったのは、インフリキシマブBS点滴静注用100mg「NK」という商品名のもので、発売したのは日本化薬。もちろん、発売前の試験でオリジナルと比べて、同等の主作用と副作用が確認されています。
一番気になるのは価格ですが、オリジナルのレミケードが、1瓶が8万9536円に対し、日本化薬が発売したバイオシミラーは5万9814円1、67%に設定されました。
一度に2本を使う場合、3割負担の方は、レミケードでは5万3722円かかりますが、バイオシミラーならば3万5888円となり、2万円弱負担が少なくなることになります。
レミケードに次に登場したのは、現在リウマチのバイオ製剤の中で一番使われているエタネルセプト(エンブレル、ファイザー製薬)です。これのバイオシミラーも、現在開発中で、日本では製薬大手の第一三共が、昨年夏から最終の治験を開始しており、今年中に承認申請、2016年中の発売が見込まれています。
薬剤費がかかることが、バイオ製剤導入の上で大きなネックになる例は少なくありません。これでも、まだまだ安いとはいえませんが、少しでも使える患者さんが増えることは、リウマチ診療に携わる者として歓迎すべきことだと思います。