少なからず、ヨハン・セバスチャン・バッハのことを勉強してみるということは、18世紀前半のドイツの人々の生活を想像できるようにするための知識の整理ということにつながります。
ネットでの検索だけでも、かなりの知識を得ることができるものですが・・・便利な世の中になったものです・・・さすがに、それだけでは正しいことなのかの保証もありませんし、また知れば知るほど物足りなくなります。
おのずと、バッハに関する書籍も同時に読みたくなるわけですが、日本語で読める専門書ということになると、ある程度限られたものばかりになってしまいます。
歴史的には、古い有名な大著もありますが、1980年代以降に急速に進歩した学問的な裏付けの無いものは、とりあえず手を出してもしょうがない。
バッハ自身の伝記的な詳細な解説は、
「ヨハン・セバスチャン・バッハ」
マルティン・ゲック・著、小林義武・監修、鳴海史生・訳
2001年 東京書籍
これにつきます。全4巻からなっていて、分売はされていません。第1巻が「生涯」、第2巻が「声楽曲」、第3巻が「器楽曲」、そして第4巻に年表・作品目録を「資料」として収載しています。
バッハの全作品を解説したものは、
「バッハ事典」
礒山雅、小林義武、鳴海史生・編著
1996年 東京書籍
特に個々のカンタータをすべて聴いていこうと思うと、これに載っているくらいの解説が無いと、キリスト教徒でもなく、またドイツ語を理解できない自分としては、とても太刀打ちできません。
もっと簡易なものはいくらでもありますが、それらはネット検索でも十分間に合う程度のことしか書かれていませんので、わざわざ購入するほどの理由は見当たりません。
ただし、問題はいずれの書籍もかなり高額であるということ。当然、新品をいまだに扱っているなんてことはありませんから、古本で探すしかない。
どちらもプレミアがついて、Amazonではかなりの価格になっています。そこで、こればかりは忍耐強くネットの古書を探し続けるしかありません。幸い、しつこく検索していると、たまに驚くような価格で出ていることがあるものです。自分は、Amazonの価格の半分以下でようやく見つけることができました。
カンタータ全般については、全集を録音したトン・コープマンが中心になって編集した「バッハ = カンタータの世界」 (全3巻)が、内容・量ともに群を抜いた解説になっていますが、残念ながら学問的すぎる内容のせいか、日本語訳も理解しにくく、相当上級者向きというところでしょうか。そこで、お勧めしたいのは、
「バッハ カンタータの世界」
樋口隆一・著
1987年 音楽之友社
比較的古いのですが、さすがにもともと日本語で書かれたものですから、内容はわかりやすい。量的にも手頃ですし、古書としても適切な値段で手に入れることができます。
そして、受難曲などの大規模な声楽曲については、
「マタイ受難曲」
礒山雅・著
1998年 東京書籍
もちろんタイトルからして、マタイ受難曲がメインの労作。一つ一つ曲の詳細な解説がすごいのですが、受難曲全般の解説も大変ためになります。
さらにバッハの行動、考え方を理解するためには、キリスト教にも精通することが不可欠なのですが、さすがに荷が重すぎます。キリスト教の思想に慣れ親しんで生活していないと、かなり難しい。
聖書やキリスト教史の解説本は山ほどありますが、これに手を出すと底なし沼にはまってしまいそうです。このあたりは、ネットでの情報レベルに留めておく方が無難かと思っています。