自分のクリニックは、昨年12月に開院して丸10年となりました。
10年というと、ひと昔と言われる期間だけに、どこかで実際のところどうだったのか一区切りの評価をする必要があるとは思っていたのですが、なかなか客観的に考える方法が難しい。
幸いにも開院以来、電子カルテを使用していたので、患者さんのデータは出しやすいので、まずこのあたりから整理してみることにしました。
これは、年ごとの来院患者数を示したグラフです。
全体の数としては、だいたい最初の5年くらいは伸びていますが、その後は頭打ちというところです。一定の診療圏の中で、極端に人口や診療所数、あるいはクリニックの評判や診療体制が変わらない限りは、どこかで一定のレベルに落ち着くのは当たり前でしょう。
年間の診療日数は、うちのクリニックは270日前後ですから、一日の来院患者数は100人まではいかないような状況です。これは整形外科診療所としては少ない方で、平均的には150人くらいと言われていることを考えると、経営的には厳しいところが無いわけではありません。
横浜市都筑区の立地としては、今から冷静に考えても本来はクリニック経営上の条件の良い土地とは言えません。
何故なら、人口の平均年齢が若い。開院当時は40歳を超えていませんでした。整形外科診療所としては、最大の患者層は高齢者であることは当然のことです。
そして、港北ニュータウンという場所の性格として、人の出入りが多い。首都圏に近い通勤しやすい場所として、転勤でやってきて数年でいなくなる人がかなりいる。
平成26年の統計では、都筑区は人口増加数は横浜市の行政区の中では5位で少なくはない。その内訳で見ると自然増加率、つまりこどもが生まれて増える割合が他区に比べて圧倒的に高いにもかかわらず、社会増加率はゼロに近いんです。
これは、港北ニュータウンの性格をよく現わしています。小児科、産婦人科、耳鼻科などの開業には向いている土地ということが言えるかもしれません。
ただし、地下鉄の新設などにより、人口増加が目立った時期がありましたが、今は人口の増加率ではだいぶ下がっていて、ほぼ落ち着いた感があります。
さて話をクリニックに戻すと、ここで注目したいのは初診の患者さん。初診だけのグラフを作ってみました。
再診だけどんどん増えるのでは、やたらと通院させるだけの「経営が主体」のクリニック、あるいはなかなか治せない「実力の無い」クリニックという評判になってしまいます。
純粋な初診、つまり初めてクリニックを訪れた方はクリニックの患者番号の増加でカウントできます。それ以外は再初診、つまり二度以上訪れた患者さんで、いわゆるリピーターと言えます。
注目すべきは、このリピータです。最初に受診して不満を残せば、その患者さんは次の時には別のクリニックを選びます。何しろ、クリニックがあるのは駅前の診療圏が重なるクリニックが複数ある地域です。
とりあえず、数だけで言えば初診の伸びは、全体の数と一緒でこの5年間はあまり変化はありません。しかし、再初診患者数は増加傾向は止まっておらず、リピーターが増えていることになります。
人口の入れ替えが激しい地域であることを考えると、リピーターの増加は、クリニックに対する評価としては十分に価値がある結果と考えていいのではないでしょうか。
もう一つ、グラフを作ってみました。
受療率という言葉あって、どのくらいの割合で病院を受診するかという数字。これが人口に対する患者発生数の目安になるので、経営上は収入の予想を立てる上で重視されるものです。
整形外科の場合は、取りまとめられている項目の複数に関わるので、正確な受療率というものはなかなか推定しにくいのですが、一般的には10%以下と言われていて、だいたい8%くらいというのが妥当ではないかと思います。
都筑区の人口の年次推移に合わせて、各年の推定患者発生数を算出して、うちのクリニックの初診患者さんがどのくらいの比率で含まれるかを出してみました。前のグラフと似ているので、意味が分かりにくいかもしれません。
都筑区には整形外科診療所が、おそらく11か所あります。他にも内科で併設しているところも数か所。単純にそれらで割ると、診療所一か所あたり10%程度の初診患者が割り振られることになる。ですから、純粋に新規の患者さんは10%ちょっとで推移していますから、これは当然の数字ということができるようです。
ただし、再初診の患者さんが漸増して上乗せされていて、推定発生患者さんの1/4くらいが受診したことになります。これは、正しいかどうかわからないのですが、自己満足と言ってしまえばそれまで。
積極的な患者満足度調査のようなものはしたことがありませんが、少なくともこれらのことが、それなりの評価と考えたいと思います。
ただし、一人医者の自分も年をとりましたし、開業当初のようなパワーはさすがに無いことは自覚しますし、そもそもマンパワーとして、現状はほぼ限界なんだろうと思います。
自分の診療スタイルを変えれば、患者数をもっとこなすことができるかもしれませんが、大袈裟に言うと時には医者としての信念を曲げることになりますし、そもそも体力的に無理が来るかもしれません。
また、最近流行りの在宅などに手を出して、経営を拡張するというような才覚にも恵まれていないので、野心のかけらも無いようですけど、現状維持というのが無難な戦略なのかなと思います。