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2017年2月3日金曜日
奴らを高く吊るせ (1968)
テレビ・シリーズの「ローハイド」で人気が出たクリント・イーストウッドは、1964~66年にイタリアに渡りました。
セルジオ・レオーネ監督の西部劇「名無しシリーズ三部作」に出演し、後に「マカロニ・ウェスタン」と呼ばれるこれらの作品によって、一気に人気を不動のものにしました。
しかし、おそらく純正王道の西部劇・・・例えば、ジョン・フォード監督作品とか、ジョン・ウェインが出演するような作品に比べて、「マカロニ・ウェスタン」は際物のB級扱いであったことは、イーストウッドの悩みの種であったと思います。
そして、1968年にハリウッド復帰作となったのが、「奴らを高く吊るせ (Hang 'em High)」でした。この作品も西部劇ですが、典型的な善と悪の戦いとスカッとする撃ち合いのような作品ではありません。
時代は無法者の時代から、社会が熟成して法律の下に国としてまとまりはじめる頃のオクラホマ。
間違いでリンチされ吊るし首にされた元保安官のイーストウッドは、偶然助かり連邦保安官になり、合法的に自分を吊るした連中を捕まえることになります。
やはり異色西部劇と言えるのは、この連中は悪者ではないというところ。善良に暮らしていた一般市民であり、街の実力者です。
法に厳しく、情に流されず悪者に死刑を言い渡す判事からは、彼らを生きて捕まえて必ず裁判を受けさせるように強く言い渡されます。
判事の厳しさと対立しながら、保安官としての職務をこなしていくイーストウッドですが、敵を追い詰めて自殺され、復讐のむなしさがわかります。
すでに留置していた一人は高齢で病気だったので、イーストウッドは判事に釈放を願い出ますが、判事は頑として承諾しません。
判事はイーストウッドとの言い合いで、「私だって吊るしたくてやっているわけではない。自分と神の間に誰かがいて、それは違うと言ってくれればどれだけ楽か。しかし、今は法を徹底させて社会を作らなければいけない」と説明します。
もう、完全に社会問題提起にほかならないわけで、アメリカという国の成り立ちの一端を垣間見ることができると思います。
最後に判事は釈放に同意しますが、復讐はもういいと思ったイーストウッドに、そのかわりまだ逃亡中の残りを「生きて捕まえて」くるように言い渡して映画は終了します。
イーストウッドのカッコよさは、もういうことはありませんし、いろいろな「らしさ」も随所にでています。しかし、やはりB級という評価におちついているのは、テッド・ポスト監督の技量もあるかもしれませんが、やはり西部劇としてのスカっと感が足りないところなのかもしれません。
広場での公開処刑のシーンなどはやたらと長く、冗長といわざるをえません。法を遵守することの正当性を強調したかったのだと思いますが、なんかなぁという感じ。
社会はドラマとして見れば、必ずしも悪い作品ではないとは思いますが、イーストウッドハリウッド復帰主演作としては、やや空回りなのかもしれません。
☆☆☆★★