2017年2月11日土曜日

受験シーズン


いろいろな学校があって、いろいろな年齢の方が毎年たくさんの試験を受けているわけですが、この時期は、特に小中高大などの中心となる学校の入学試験が集中する期間。

新年度に向けて、受験生の方は希望と不安が様々に入り混じって試験会場に向かうことと思います。誰もが、自分の行きたい学校の試験で日頃の実力を発揮できて合格できればいいですよね。

周りは気楽に「頑張れ」とか、「死ぬ気でやってこい」とか、「緊張するな」などなど、もちろん合格してほしくて応援の言葉をかけます。

でも、本人からしてみれば「はいはい、わかりましたよ」と受け流すしかない。試験会場に入ってしまえば、自分の頭だけしか頼れませんから。

ですから、本当のところは、周りは見守って、祈るしかありません。とにかく、いい結果の報告をひたすら待っているだけです。

入学試験は、入学希望者を選別するための試験ですから、人気のある学校は不合格者の方が圧倒的に多い。一方、資格試験というのがあって、これは一定の基準を満たすかどうかを試すもの。

普通は、受験しようという者全員が合格すべきものですが、実際には落ちる人もいる。逆に、合格して当たり前というプレッシャーが凄いことが一番怖いわけです。

自分もかつて・・・もう、30年以上昔に、医師国家試験を受験しました。

大学医学部は6年制で、貴重な「青春」の時期の大多数をひたすら学校ですごして、卒業すると医学士というものになれるのですが、医学士の資格だけでは何にもすることはできません。

医学部を卒業すると、一番のポイントは医師国家試験の受験資格が得られることです。ですから、医学部は「医師国家試験予備校」であるという指摘は、あながち間違いではありません。

医師国家試験は厚生労働省が実施するもので、各大学医学部から100人程度、全国で約9千人くらいが受験します。自分が受験する直前までは春と秋の年2回でしたが、現在は春に一度だけ行われます。

昨年の結果は、最も合格率が高い大学で99.13%、最低は84.25%で、平均は91.5%でした。大雑把な言い方をするなら、10人に1人、あるいは新卒者だけに限ると20人に1人が落ちる試験ということになります。

よほど緊張しすぎたり、体調を崩して実力を出せない場合を除いて、基本的に平常心で臨めばそれなりの準備をしてくれば合格するはず・・・ですけど、実際はその準備が大変。

自分が受験するときには、年長者の医師から「君らは大変だね。私の頃(戦後すぐ)からすると、知らないといけないことは数百倍だよ」 と言われました。医学は日進月歩で、知らなくてよくなる知識はほとんどなく、知らなければならない知識はどんどん増えています。

ですから、自分の頃と比べれば、数百倍は行かないとしても、試験に出題される範囲は数十倍には膨れ上がっていると想像します。

例えば、関節リウマチという病気については、自分の頃はほとんど何もわかっていませんでした。診断のための昔の基準と、今となっては効果を期待できない治療の流れを一つ覚えれば、試験には事足りたものです。

今だったら、遺伝子からはじまり、免疫の機序を理解し、治療のさまざまなオプション、そしていろいろな合併症と薬の副作用、それも肝炎だったり、結核だったり、リンパ腫だったり、肺の特殊な病態だったり・・・もう、全身いろいろなことまでわかっていないといけない。

まぁ、どっちにしても、あまりに試されることが膨大ですから、今更じたばたしてもしかたがない。直前に回ってくる噂の域を脱しない怪しげな情報が飛び交うことと思いますが、今まで自分ががんばってきたことを信じて平常心で臨むことが一番重要だろうと思います。

今日から3日間にわたって、今年の医師国家試験が全国の会場で行われます。先輩医師として、また新しい仲間が加わることを期待しています。