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2018年2月10日土曜日

万葉集 (5) 代表的な歌


何しろあまりにたくさんありすぎて、万葉集をいきなりポンっと渡されたら、誰もがどこから手を付けていいのか悩むはずです。最初から一つ一つ順番に読み込んでいくのもありですが、相当な覚悟と忍耐を必要としそうです。

例えば、歴史の時系列を追って、その時々に詠まれた歌を拾い読みして、いろいろな事件の裏を想像していくという読み方もあります。または、名歌とされているものを中心に、有名どころをまずおさえておくのも、とっかかりとしては悪くはありません。

実際、人気投票のようなことはいろいろあるようで、その時代・風潮によって、選ばれるものに変化はありますが、定番とされている有名どころを紹介してみます。

山上憶良

銀母  金母玉母  奈尓世武尓  麻佐礼留多可良  古尓斯迦米夜母
銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も 何せむに
 優(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも

秋野尓  咲有花乎  指折  可伎數者  七種花
秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り
 かき数ふれば七種(ななくさ)の花

額田王

茜草指  武良前野逝  標野行  野守者不見哉  君之袖布流
あかねさす 紫野(むらさきの)行き 標野(しめの)行き
 野守(のもり)は見ずや 君が袖振る

柿本人麻呂

東  野炎  立所見而  反見為者  月西渡
東(ひむがしの) 野にかぎろひの 立つ見えて
 かへり見すれば 月傾(かたぶ)きぬ

志貴皇子

石激  垂見之上乃  左和良妣乃  毛要出春尓  成来鴨
石走る 垂水(たるみ)の上の さわらびの
 萌え出(い)づる春に なりにけるかも

大伴家持

春苑  紅尓保布  桃花  下照道尓  出立□(女偏に感)嬬
春の園 紅(くれない)にほふ 桃の花
 下照る道に 出で立つ娘子(おとめ)

小野老

青丹吉  寧樂乃京師者  咲花乃  薫如  今盛有
あをによし 奈良の都は 咲く花の
にほふがごとく 今さかりなり

山部赤人

田兒之浦従  打出而見者  真白衣  不盡能高嶺尓  雪波零家留
田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にぞ
 富士の高嶺に 雪は降りける

大伴旅人

和何則能尓  宇米能波奈知流  比佐可多能  阿米欲里由吉能  那何列久流加母
我が園に 梅の花散る 久かたの
 天より雪の 流れ来るかも

他に当然たくさんの有名歌はありますが、最低このくらいは知っていて損はないようです。ここから掘り下げようと思えば、それは万葉底なし沼の始まりかもしれません。