2018年2月5日月曜日

万葉集 (3) 歌の形式と種類


君之行 氣長成奴
山多都祢 迎加将行
待尒可将待

君が行き 日(け)長くなりぬ
山たづね 迎へか行かむ
待ちにか待たむ

あなたが旅立ってからずいぶん長い日が経ってしまった
あの山道をたずねて迎えに行こうか、やっぱり待っていようかな

これは、万葉集に収録されている最も古い時代のものとされていて、仁徳天皇の磐媛皇后が、亡くなった天皇を偲んだ歌です。万葉調の短歌形式による相聞歌です。

万葉集に含まれる歌の形式は、短歌が最多で9割以上を占めます。短歌の基本形は五七五七七の三十一音からなり、五七五を上の句、七七を下の句と呼び、上の句の三句の後ろに区切りがあります。

万葉集では五七・五七・七という具合に、二句と四句の後ろに区切りがある(二句切れ、四句切れ)ものが多く、三句切れより重厚感が増すと言われ「万葉調」と呼ばれています。

いずれにしても、形式内に収めるために、一文字が多くの意味を含有しているので抒情性が強くなり、裏の裏まで読み込むことで芸術性も高くなります。

それに対して長歌(ちょうか)は、五七・五七・・・を繰り返し、最後を五七七で結ぶのが基本で、短歌に対して叙事性が強いものになります。ただ、初期には不規則な句を含む場合も多く、形式をが確立させたのは柿本人麻呂と言われています。しばしば、短歌形式の「反歌」が付属していて、本編のテーマを反復して強調したり、不足を補完・発展させます。

短歌と長歌でほぼすべてですが、後はごくわずかに旋頭歌、仏足石体歌、連歌体と呼ばれるものが含まれます。

内容的には、主として宮廷関連の公的色彩の濃い「雑歌(ぞうか)」、主として恋歌を中心とする個人的な手紙のようなやり取りのような「相聞(そうもん)」、死者の追悼・哀悼を表す「挽歌(ばんか)」の3つに分類されます。

一部に集中的に収載されている東国方面の民謡は「東歌(あずまうた)」と呼ばれ、また九州での対外防衛に駆り出された防人、またはその家族によるものを「防人歌(さきもりうた)」と云います。