50年代末に登場したチャック・ベリーらのロックンロールは、瞬く間に若者を中心に受け入れられ、モダン・ジャズの衰退が始まる重要な要素であったことは間違いない。
コード進行に縛られたアドリブ展開に閉塞感を感じていたマイルス・デイビスらが始めたモード奏法でしたが、60年代に入って和声全体からの解放を目指すフリー・ジャズの方向性を打ち出すミュージシャンが登場します。
またその一方で、ロックンロールの基本リズムである8ビートを取り入れ、ジャズらしい4ビートやランニング・ベースを捨てたジャズ・ロックと呼ばれる。今でいうクロスオーバー、あるいはフュージョンの走りが登場しました。まさに「The Sidewinder」は、そのはしりと言える名盤とされています。
超有名なタイトル曲は、基本ブルースなんですが、8ビートで奏でられるリフは、自分のようなロック音楽を先に聴いていた耳には、初めて聴いたときはまぁ普通という印象でした。でも、当時のジャズとしては斬新なもので、ジャズ・ファンはびっくりしたんでしょうね。
ただし、リズムはロックでも、各人のソロのテイストはやはりジャズ。長年耳に馴染んだ音楽をそうそう急に変えられるものではありません。そういう意味で、センセーショナルな人気盤であることは確かなんですが、本当の意味で名盤かと聞かれる躊躇する部分があります。
リー・モーガンはアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャースで人気を高めてファンキーで切れのあるトランペット・ソロが特徴。ここでは、オン・ビート、8ビートを取り入れていますが、ソロは従来通り。少なくともモーガンの代表作とは云い難い。
モーガンは女性トラブルから、演奏するクラブで奥さんに射殺されるという33年の人生の悲劇的な結末を迎えるのですが、最後の10年間はこのアルバムのヒットに縛られて、正直パッとしない。
やはりジャズのロック化には、あと数年、帝王マイルスが動くのを待たねばなりません。
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