ポール・チェンバースは、マイルス・デイビスのレギュラー・グループの初代ベーシストであり、50年代なかばから60年代前半にかけての10年間ほどの間、ジャズ・ベースの絶対王者の地位にあった人。
これはなんと、チェンバースにとっては20代のことで、若くしてこれだけの活躍をしたことは凄い事。しかし、残念ながら1969年に肺結核で、33才という若さで亡くなりました。
めりはりのあるベース・ラインと、時に弓を使ったアルコ奏法のアドリブなどは定評があり、自信の数少ないリーダー作でも、素晴らしい演奏を残しています。
普通は代表作として「Bass on Top」あたりを選ぶところなんですが、ここではあえてこっちのアルバムを推したい。
これは、マイルスの超名盤「Kind of Blue」の同時期、グループのメンバーが集まってマルス抜きで気楽に楽しく、やりたい放題にぶちかましたという感じのセッションの記録。
キャノンボール・アダレイ(as)、ウィントン・ケリー(p)、ジミー・コブ(ds)、そして当時期待の新人フレディ・ハバード(tp)という布陣で、従来ののりのりのジャズの溌剌とした典型的な演奏の数々を聴くことができます。
あまりにも普通といえば普通なんですが、ジャスの楽しさのエッセンスがつまった演奏は、とても魅力的ですし、チェンバースも無駄に長いソロを取らないので聴いていて集中力が途切れません。