2016年1月29日金曜日

フォルテピアノでシューベルト

一昨年の春から1年間、ひたすらバッハの教会音楽をむさぼり聴いたんですけど、そこで古楽器というものに一定の理解を深めることが出来ました。

以前は、いくら作曲者の耳に本当に聞こえていた音に近づくということは、それほど重要とは思っていませんでした。もちろん、今でもそこにこだわるつもりはありません。

わざわざ響きの少ない当時の楽器で演奏するよりも、現代的に完成された楽器の音色で十分に楽しいと思っていたわけですが、実際にバッハで体験したのは、モダン楽器を使って厚化粧をしたバッハよりも、古楽演奏のバッハの方が、聴いていて心地よいということでした。

確かに現代の楽器の方が音量があって響きもいいのですが、当然バッハはそういう楽器で演奏されることは想定していない。その時の楽器を最大限に生かすことを考えて、音符を書いていたはずです。

ですから、現代楽器による演奏と同じに、古楽器による演奏にも耳を傾けることはクラシック・マニアとしては避けては通れない道だということに気がつきました。

そこで、ピアノです。

今、普通にピアノというと一番有名なのはスタインウェイ社のもの。スタインウェイが創立したのは1853年です。同じ年にベヒシュタインも誕生しています。ベーゼンドルファーはもう少し早くて1828年。

ベートーヴェンが亡くなったのは1827年、シューベルトは1828年、シューマンは1856年。つまり、彼らはモダンピアノの微かな光は見えていたかもしれませんが、基本的にそれ以前の鍵盤楽器を使用して作曲をしたわけです。

モダンピアノの黎明期を支えたのがショパンとリストですが、リストは長命でしたが、ショパンは若死にしていて1949年には亡くなっている。

つまり、自分が一番好きな時代の作曲家たちは、いずれもモダンピアノ以前に活躍した人たちだということです。であれば、彼らが使用していた楽器は何か知りたくなる。

鍵盤楽器として最初に世間に広まったのは、バロック期のチェンバロ(クラブサン、ハープシコード)です。これは弦をひっかくことで音を出しますが、音量は小さいし、音に強弱をつけることができません。

さて、名だたる古典派の作曲が使ったのがフォルテピアノ。ここでは、弦を叩くことで音を出すので、モダンピアノのプロトタイプということがいえるかもしれません。

ベートーヴェンは、32曲あるソナタで、新しいフォルテピアノが登場するたびに、積極的に使用して音域を広げたり、演奏法を改良したりしていくことになります。

モダンピアノの弾き方を、そのままフォルテピアノでやろうとしても、まともな音はしないそうです。演奏の仕方は別物で、下手に弾くとコンコンと木琴でも叩いているかのような、響きのない耳につく音になってしまいます。

シューベルトのピアノ・ソナタにはまってしまうと、ベートーヴェンに比べて情報量がずいぶんと少なくなってしまうことが残念。散発的に弾かれることはあっても、何しろヴィルヘルム・ケンブによってまとまった録音を初めて行ったのが、60年代後半というのが驚きです。

そして、フォルテピアノによる全集を最初に完成させたのは、90年代前半のポール・バドゥラ・スコダで、それに続くのがマルコム・ビルソン。21世紀になってからは、ヤン・フェアミューレンです。

スコダは比較的最近ボックスセットで再発されたので、自分もこれで入手しました。ビルソンも、Amazonではまだまだ簡単に探せます。フェアミューレンも新しいので入手は容易で、最近ボックスも新たに発売されています。また彼は、室内楽や連弾曲にも幅を広げているので楽しみです。

問題はトゥルーデリーズ・レオンハルト。レオンハルトと聞くと、最初に思い出すのはグスタフ・レオンハルトで、世界中のチェンバロ奏者の師匠みたいな存在ですが、トゥルーデリーズ・レオンハルトは実妹さん。

80年代から、断続的に録音をしていて、この人の演奏はマニアには大変評価が高いようなのですが、いずれもかなりマイナーなレーベルからばかりCDが発売されていて、ほとんどが入手困難。

2000年以降にも、一部をあらたに再録音しているのですが、これもレコード会社がばらけていて、しかも体系的になっているようでなっていないので、どれを買えばいいのかよくわからない。困ったものですが、「幻の名盤」と言われると、何とか手に入れたくなるのがマニアというもの。

まぁ、地道に世界中のAmazonをチェックするしかありませんね。

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