2020年12月20日日曜日

摩天楼はバラ色に (1987)

マイケル・J・フォックスの最高傑作は?

誰もが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だと答える。いや、それを否定するつもりはありませんが、あえて言いたい。

彼のキャラクターが本当に生かされた「摩天楼はバラ色に」を見てから、もう一度考えてみてくれと。

名匠ハバート・ロスが監督したこの映画は、80年代のアメリカを見事に切り取ったラブ・コメディの傑作なのです。もう完全な夢物語であり得ない展開なのですが、誰もが自分を投影できる等身大のマイケル・J・フォックスが、愛と仕事を手に入れるサクセス・ストーリーは、拍手喝采しかありません。

カンサスの田舎からアメリカン・ドリームを夢見てニューヨークに出てきた、ブラントリー・フォスター(マイケル・J・フォックス)は、到着早々就職するはずの会社が乗っ取りにあい仕事を失います。

しかたがなく遠い親戚で大会社の社長、ハワード・プレスコット(リチャード・ジョーダン)に頼み込んで、会社内の郵便の配送係の仕事に就きます。そこで会社内の郵便物から経営上の問題点に気がつき、新米重役ウィットフィールドに成りすまし経営の効率化策を作り出すのです。

重役の中の紅一点クリスティ・ウィルズ(ヘレン・スレイター)に一目ぼれし、偶然送迎をした社長夫人ベラ(マーガレット・ホイットン)からも気に入られたウィットフィールド、いやブラントリーは重役会議で会社乗っ取りを防ぐために経営効率化のため縮小案に反対して、拡大案をぶちあげる。

実はクリスティは社長ハワードの不倫相手で、ハワードからウィットフィールドをスパイするように頼まれます。しかし、ブラントリーの本気の事業計画を聞いているうちに二人の仲はどんどん縮まっていくのです。

社長宅でのパーティの夜、ブラントリーはクリスティ、ベラはブラントリー、ハワードもクリスティ、クリスティはブラントリーのそれぞれの部屋に忍んでいこうと行ったり来たり。最後はクリスティの部屋で、全員が鉢合わせしてすべてがバレてしまう。

ブラントリーとクリスティは首になりましたが、会社創業家の娘であるベラの助けで、乗っ取りを画策する敵対企業の株を買い上げで撃退し、ハワードを首にして新社長に就任するのでした。

・・・と、まぁ、世の中こんなにうまくいくわけがないところを、突っ込む代わりに応援したくなるというのがマイケル・J・フォックスの人徳というところ。

相手役のヘレン・スレイターは1984年に映画「スーパーガール」でデヴューした、ブロンド美人。リチャード・ジョーダン、マーガレット・ホイットンの二人もいい味を出すバイプレイヤーですが、二人とも残念ながら病気で亡くなりました。

この映画では音楽を担当したのは、当時引っ張りだこだったデヴィッド・フォスターで、実にムードのある音楽を作りました。そこへ、ナイトレンジャーらのテーマソングが効果的に使われ、映像と音楽の組み合わせは実に素晴らしい。

とにかく見終わって、とてもすっきりした気分になれるというのは重要です。評論家諸氏には必ずしも名作扱いされていない感じはありますが、マイケル・J・フォックスの出演作としては出色の出来栄えで、彼の魅力をしつかりと引き出した傑作として評価されるべき作品と言えます。