1989年、スティーブン・スピルバーグ監督作品は5月に「インディ・ジョーンズ」が公開されただけでなく、クリスマス・シーズンにさらにこの作品が公開されました。
スピルバーグが随分と前から気に入っていた、1943年の映画「ジョーと呼ばれた男」のリメイク作品で、元々の戦闘機乗りを山火事の消火飛行士に変えています。
1993年、癌のため亡くなったオードリー・ペップバーンが8年ぶりに出演した映画であり、そして最後の映画となりました。ヘップバーンは「E.T.」を見て、スピルバーグの才能を認め二つ返事で出演を承諾しました。
主演のリチャード・ドレイファスは、スピルバーグ作品では3回目の出演。ヒロインのホリー・ハンターは、1987年の「プロードキャスト・ニュース」に注目度が上がり、この後1993年には「ピアノ・レッスン」でアカデミー主演女優賞を獲得しています。話題性はそれなりに合ったのですが、正直あまりばっとしなかったというのが実際のところ。
山火事の消火活動を専門に行うピートは、友人のアルの危機に無茶な救援をして自らは爆死します。天使ハップハは、そんなピートの魂を地上に戻し、新米のベイカーの霊感となって指導させるのです。
ピートの恋人だった飛行士でもあるドリンドルは、彼の事がずっと忘れられないでいましたが、ベイカーは彼女に恋をしてしまい、ピートは間に入って悩むことになる。
山火事で消火隊が退路を断たれる緊急事態が発生し、ベイカーは危険を承知で飛び立つ準備をしていると、ドリンドルが機に乗り込んで飛び立ってしまうのです。経験のない彼女の無茶な行動に、ピートは霊感となって救ての手を差し伸べます。そして機体は川に沈めてしまいましたが、何とか無事に戻ったドリンドルにピートは最後のお別れをするのでした。
・・・と、まぁ、死んだ人間が天国から戻ってくる系の物語としては、ある意味普通の展開で、新鮮味はあまり無い。何よりも、死んでからも、あるいは生きていてもお互いに忘れられない二人の「純愛」のはずなんですが、もう一つ、恋愛を描くことはスピルバーグが苦手なのがはっきりしたというところ。
超イケメンじゃないドレイファスが、ずっと一人を思い続けるのはアリだと思うので、キャスティングは許せる。ただ、その強い二人の絆が見えてこない。死んでからの話が中心ですから、しょうがないと言えばそれまで。
操縦は素人並みのドリンドルが勝手に飛行機を飛ばしてしまう・・・と、ずいぶんと無茶な決心をするだけの重みが見えてこないのも辛い所。自分にアプローチしてくるベイカーを危険な目に合わせたくないからというのは無理があるし、ピートへの思いを断ち切るためというにはベイカーへの思いがはっきりしない。
よくある映画としては佳作の域だとは思いますが、やはり、スピルバーグに対する周囲のハードルがどんどん高くなっているわけで、それを監督自身も十分に自覚することになっただろうと思います。
スピルバーグは、「1941」以後は純然たるコメディ映画を撮っていません。そして、この映画の後には恋愛ものも封印してしまいました。
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