2020年12月11日金曜日

フック (1991)

スティーブン・スピルバーグの映画は、今回は思い切りファンタジー。それも、かなりこどもっぽい題材で、さすがに公開時は驚きました。

なんと、有名なこども向けの「ピター・パン」がテーマ。そして、ピーターの宿命の敵である海賊のフック船長がタイトルになっています。

ピーター・パンは、ディズニー・アニメで一躍世界中で有名になりましたが、そもそもは20世紀初頭のは、イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲がオリジナル。

ロンドンの公園で迷子となり、年を取らないネバーランドで永遠の少年として、妖精ティンカーベル、ピーターと同じく迷子になって年を取らないたロストボーイらと共に、海賊フックやインディアンのタイガーリリーらとの冒険をするという話。

ロンドンに住む女の子ウェンディはピーターの存在を信じていて、ある夜、自分の影を探しに部屋に入ってきたピーターの影を縫い付けてあげたのをきっかけに、弟たちとネバーランドに飛び立つ。冒険の末、大人になることを選択したウェンディは、ネバーランドを後にしました。

まぁ、かなり端折ってしまうと、こんな感じですが、ここんとこを知っているか知らないかで、この映画の評価はだいぶ変わって来るかもしれません。できれば、ディズニー映画でもいいのでも先に見返しておくと一層楽しむことができます。

この映画は、まさにオリジナルの登場人物、そのキャラクター設定を受け継いだ「続編」と言えるものなんですが、一番の特徴は、ピーター・パンが大人になっちゃったということ。しかも、自分がピーター・パンだったことはまったく忘れ、家族を顧みない仕事一筋の腹の出たおじさんとして登場します。

ピーター・パンとの決着をつけたいフックが、ピーターのこどもを誘拐したことで、ティンカーベルの助けでネバーランドに再び戻ったおじさんピーター。最初は空を飛ぶことも忘れ、剣の使い方も思い出せません。

しかし、ティンカーベルに一番幸せなことを思い浮かべれば再び飛べると助言され、家族との生活が大事であることを思い出したおじさんピーターは、ピーターパンに戻り子供たちを助け出し、フック船長をやっつけるという話。

スピルバーグが映画に描く登場人物は、どこかで必ずピーター・パンのような、永遠のこどもであったり、こどもの心を忘れない大人です。おそらくは、それがスピルバーグ本人にも当てはまることだろうと思います。

そういう意味では、スピルバーグがピーター・パンの映画を作ることは必然と言えるかもしれません。しかし、興業的には失敗とは言えない結果を残しましたが、映画として必ずしも記憶に残るかというとそうでもない。

ピーターを演じるのは、コメディアンとして映画にもたくさん出演していたロビン・ウィリアムス。ただ、どんなに頑張っても、ピーターがおじさんというのは、元々世界中の誰もが持っているイメージから外れてしまう。これはウィリアムスの責任ではありません。

勇気があって無邪気なこどもの代名詞が「ピーター・パン」であって、残念ながら大人のピーターは、あくまでも「ピーター・パンのような」人にすぎないと思ってしまいます。「もしもピーター・パンが大人になったら」といういかにも映画的な発想は、気持ちとしてはわからないわけではないけど、想像しておくだけにしておかないと・・・

ただし、名優ダスティン・ホフマンは、メイクの巧妙さもあってさすがにフック船長を見事に演じていますし、ジュリア・ロバーツも、ちょっと嫉妬深いティンカーベルにピッタリです。オール・セットで、ネバーランドの世界観もうまく再現しているところはさすが。

ピーター・パンの後日譚として、こんなこともあるかもしれないという程度の軽い気持ちで見ればそれなりに楽しめる作品なのかもしれません。