2010年2月7日日曜日

マイルス・デイビス part 3

Miles Davisほどの音楽家になると、存在自体は神格化して、コアなファン(たぶん自分もその一人)にとっては宗教に近いものがあるわけです。それはコンピュータの世界ではアップル・ユーザー、野球の世界ではタイガース・ファンなんかにも一脈通ずるものが・・・

それでMiles好きにとっては、1991年に本人が亡くなって絶望の淵にたたき落とされたわけですが、この10年くらいは驚異的な海賊版が雨あられの如く登場して、まだまだ望みをつないでいるような状況なのです。

レコードからいくつかの時代に分けると、1945年の初レコーディングから1950頃までの初期については、ほとんどがチャーリー・パーカーとの録音が主で、まぁマイルスを聴くという観点からはどうでもいい。どれか一枚パーカーのベスト盤をもっていれば足りてしまう。実際自分もパーカーの10枚組千数百円というので満足しています。

次はPrestigeとBlue Noteの時代が50年代半ばまで続くわけですが、Prestigeについては2000年頃に8枚組のすべて詰まってますというBOXセットが発売されているので、これで全て揃ってしまうわけです。Blue Noteはアルバムで2枚です。

そこからついにColumbia(CBS)時代の約50枚のアルバムに突入するわけですが、2000年以降に10個のBOXが発売されました。このうち2つは、伝説のライブの全貌をおさめたもので、ファンにとっては垂涎のアイテムでした。しかし残りの8つはただただ一部の別テイクをおさめただけで、ほとんど新たに聴くべき物は少なく、なんじゃこりゃ状態。

ところが面白いのは、その編集過程でスタジオ録音時のテープが流出して海賊版が大量に出回ったこと。スタジオでの会話を含め、失敗でやり直したりと、曲ができあがっていく課程が興味をそそられるわけです。世紀の名盤といわれる"Kind of Blue"のセッションテープなんかは、ファンとしては狂喜乱舞物です。

去年の11月にCompleteと銘打って、CBSから発売された全てのアルバムが71枚組のCDセットとして発売されました。自分はこればかりは、思わず購入。大多数はすでに持ていたにもかかわらず、オリジナルジャケットを再現した紙ジャケットなんかは涙物です。一枚数百円で揃うんですから、これが最後のマイルス散財と思えば安い物です。

そして、1986年から亡くなるまではWarner Brothersの時代ということになります。純粋にマイルスのオリジナル・アルバムと言えるのは3枚。そして、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブを集大成した20枚組で決まりとなるわけです。

ところが困ったことに、この時代にマイルスはやたらとあちこちに顔をだすようになったのです。TOTO、チャカ・カーン、プリンスなどの有名どころ以外に、誰だそれっていうようなものまで、もういろいろです。さらに、結局未発表に終わっているスタジオ録音の存在もわかっていて、ファンとしてはどうしたらいいのやら。

そしたら2002年にそれらの録音をすべてひっくるめて面倒見ましょうという"Last Word The Warner Years"という4枚か6枚組セットの発売が予告されました。こいつは助かると思っていたら、どうも権利関係のクレーム(どうやらプリンスかららしい)が入ってあえなく発売中止。これにはかなりがっかりさせられました。

ところが海賊版というのはなかなかすごい物で、既発売のものを除いた未発表音源だけで2枚組の"Black Album"が登場。サンプルに配布されたものからコピーした物のようですが、すでに持っているものとのだぶりがないだけに、こんなありがたいセットはありません。

インターネットでも海賊版が注文できるようになって、わざわざ西新宿界隈をうろつく必要がなくなり助かります。まぁ、公式盤だけでも聴ききれないくらいのアルバムがあるわけですから、わざわざ海賊版を漁らなくてもという気持ちもありますが、そのあたりがファン心理というものですよね。マイルスの場合は公式盤よりも痛快な海賊版が多数存在するので、いたしかたがないというところでしょうか。